2018 Fiscal Year Research-status Report
現代形而上学の時間論との対照におけるインド仏教哲学の刹那滅論の研究
Project/Area Number |
17K18249
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
酒井 真道 関西大学, 文学部, 准教授 (40709135)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 刹那滅論 / Stage Theory / Exdurantism / Perurantism / Endurantism / intrinsic nature |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度における研究計画のひとつの核は、現代形而上学の基本文献の内容理解であったが、2018年度においては、それによって得られた知識を基盤として、仏教の刹那滅論の、現代形而上学の時間理論との対照研究に本格的に着手した。 これに関する最初の研究成果を、8月17日-18日にオーストリア科学アカデミー・アジア文化・思想史研究所において開催された、International Workshop "God and Time II: Philosophical and Theological Perspectives on Time"にて発表した。 この研究発表では、まず、仏教の刹那滅論を、現代形而上学における時間論の主要三理論である、Endurantism、Perdurantism、Exdurantism(すなわちStage Theory)が論じられる基本的なフレームワークに位置づけることに取り組み、その上で、仏教の刹那滅論とPerdurantism、Exdurantismとの特徴的な差異について論じた。この研究で得られた知見は、 2019年度における研究の基礎として位置づけられるであろう。 また、9月1日-2日に東洋大学で開催された、日本印度学仏教学会における学術大会では、モノがなくなること、すなわちモノの消滅に関する、仏教哲学者ダルマキールティの理論の解明に取り組んだ。モノが壊れて別のモノになる、という事象を如何に整合的に説明するかは、現代形而上学の存在論において一つの重要な課題となっている。とりわけ、Stage Theoryを採る論者は、Perdurantismに対する自説の優位性を主張する際、この問題についてExdurantismがより優れた回答を導出できる点を強調する。2019年度の研究においては、この問題についての対照研究も研究の射程に入れたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究計画での目標をほぼ達成することができた。よって、現在までの研究は概ね順調に進んでいると言える。 研究成果のアウトプットの面では、年度中に2回の研究発表を行い、その成果を2本の学術論文としてまとめた。そのうち、1本は公刊済みであり、1本は校了済みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究では、より焦点を絞り、ピンポイントで、仏教の刹那滅論の、現代形而上学の時間理論との対照研究を行うことになる。そのためには、現代形而上学が提示する諸理論を正確かつ深く理解する必要があるが、その中のいくつかは、非常に込み入った理論の中で綿密に構築されており、その理解は容易ではない。また理解できたとしても、表層的な理解にとどまる恐れがある。よって、2019年度の研究では、現代の形而上学を専門とする国内外の研究者の協力を仰ぎつつ、研究を進めて行く必要がある。これに関しては、上述のInternational Workshop "God and Time II: Philosophical and Theological Perspectives on Time"の場において、現代形而上学の時間論を専門とする研究者から、参照すべき文献の紹介などを始めとして多くの助言を得ることができ、非常に有益であった。2019年度では、現代形而上学を専門とする国内外の研究者との連携研究の道を積極的に模索して行きたい。
|
Causes of Carryover |
購入を予定していた物品が見積額より若干安価となったことから差額が発生した。差額分は、2019年度の物品購入に用いる予定である。
|
Research Products
(3 results)