2020 Fiscal Year Research-status Report
現代形而上学の時間論との対照におけるインド仏教哲学の刹那滅論の研究
Project/Area Number |
17K18249
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
酒井 真道 関西大学, 文学部, 教授 (40709135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 知覚 / 知覚対象 / 顕現 / 現在主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、新型コロナウイルスのパンデミックのために、当初から参加を予定していた国際学術会議や国際ワークショップが相次いで再延期(2度目の延期)となり、研究成果の公表が予定通りには進まなかった。 その中で、令和2年度の成果としては、参加予定であった国際学術会議での研究発表の下準備として進めていた文献学的研究――8世紀後半から9世紀にかけて活躍したとされる仏教思想家であるプラジュニャーカラグプタの著作の翻訳研究――の成果の一部を発表した他、2018年8月にオーストリアで開催された国際ワークショップでの研究発表の内容を論文としてまとめたものを脱稿した。 後者は令和3年度の下半期には刊行される予定となっている。 他方、前者の文献学的研究では、中世インドの仏教思想家が、知覚と、知覚によって把捉される対象の関係性について、興味深い議論を展開していることを明らかにした。この関係性は、今後の対照研究の一つの基軸となることが期待できる。すなわち、これは、知覚が機能する長さと、その知覚によって認知される対象の長さの即応関係の問題である。プラジュニャーカラグプタによれば、知覚は瞬間にのみ機能し、その瞬間的な知覚のヴィジョンに顕現する対象は、その前と後の対象と混じり合わないという。これは知覚レヴェルでは存在するものはただ現在時のものだけということを意味する。この彼の理論は、我々の時間認識や時間認知のあり方を考える上で興味深く、現代形而上学の諸理論との対照研究――stage theoryのみならず、現在主義(presentism)などとも――に新たな視点を提供する可能性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は新型コロナウイルスのパンデミックのために、当初から参加を予定していた国際学術会議や国際ワークショップが相次いで中止となり、研究成果の公表が予定通りには進まなかった。その意味において研究には遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は本研究の最終年度にあたり、新型コロナウイルスによるパンデミックのために、令和2年度に公表出来なかった研究の発表、公刊を何らかの方法で進めて行く必要がある。 また、「研究実績の概要」において述べた新たな視点から、現代形而上学の時間論と、インド仏教哲学の刹那滅論の対照研究が可能かどうか、研究の実現可能性を探っていくことになる。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナウイルスのパンデミックのために、当初から参加を予定していた国際学術会議や国際ワークショップが相次いで再延期となり、それらに参加するために確保していた旅費を執行することができなかった。その旅費分を次年度使用額として計上している。
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