2021 Fiscal Year Research-status Report
現代形而上学の時間論との対照におけるインド仏教哲学の刹那滅論の研究
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17K18249
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
酒井 真道 関西大学, 文学部, 教授 (40709135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時間 / 過去・現在・未来 / 知覚 / 刹那滅 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、コロナ禍で2年続けて延期となっていた、台湾での国際ワークショップ("Reading Dharmapala and Bhaviveka" Workshop;National Chengchi University)がオンラインにて開催される運びとなり、研究報告を行うことが出来た。また、前年度から継続していた、プラジュニャーカラグプタにおける刹那滅論の研究についても、その文献学的研究の成果を公表することが出来た。更にまた、2018年8月にオーストリアで開催された国際ワークショップでの研究成果を、予定どおり、年度末に出版することが出来た。 台湾のワークショップでは、Nagarjunaの『中論』第19章「時間の考察」の冒頭第1偈から第3偈に関するBhavivekaの解釈について考察し、彼が、BuddhapalitaとDevasarman、更には従来Sthiramatiと見なされていた敵者の3人の対論者を斥ける理論について評価した。また、従来Sthiramati説とされてきた前主張は説一切有部の説と解すべきことを論じた。それに加えて、チベット語訳Prajnapadipaと漢訳『般若灯論』、そして青目釈『中論』、それぞれの、第19章第1偈から第3偈までの部分を比較し、漢訳『般若灯論』は青目釈『中論』を「利用」「参照」していることを論証した。 プラジュニャーカラグプタの刹那滅論研究では、彼が刹那滅論の証明を、直接知覚の、過去と未来と混じり合った現在の対象を把握しないという働きから、裏付けているということを明らかにした。彼の知覚理論は、現代哲学における、知覚と時間認識の関係をめぐる諸理論に興味深い視点を提供するものであろうと思われるが、令和3年度の研究では、その点まで研究を進めることは出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスのパンデミックのために開催が延期されていた国際ワークショップがオンラインにて開催されたことから、研究成果の公表がある程度可能となったことに加え、前年度に予定していた研究をおおむね完了することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
パンデミックにより開催が延期されていた国際学術会議等が徐々に開催される見通しとなっていることから、これまで未発表であった研究成果をまとめ、令和4年度中に出来る限り積極的に発表、公刊をすすめ、本研究を締めくくりたい。また、年度終盤では、プラジュニャーカラグプタの刹那滅論に顕著に見られる、知覚と知覚される対象の長さの対応関係、そして、知覚に生じる知覚対象の像と現在・過去・未来という「区分」の関係について、更に考察を進め、現代形而上学の諸理論との対照研究に新たな視点を取り入れることを試みる。
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Causes of Carryover |
パンデミックの影響により、参加を予定していた国際学術会議が再延期となったため、支出を控えた。該当する国際学術会議は令和4年度に開催されることが決定したため、その旅費交通費等として次年度(令和4年度)使用額を執行する予定である。また、国内学会での研究発表に係る経費としても使用する予定である。
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