2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Contrastive Study of the Theory of Momentariness in the Indian Buddhist Philosophy with the Time Theories of the Contemporary Metaphysics
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17K18249
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
酒井 真道 関西大学, 文学部, 教授 (40709135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分割可能 / 分割不可能 / 境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、コロナ禍で2年間延期となっていた、第6回国際ダルマキールティ学会が韓国・ソウル(東國大学校)にて開催され、本研究にて長く予定をしていた、研究成果発表を行うことができた。そこでは、2020年度~2021年度にかけて文献学的な研究を行った、プラジュニャーカラグプタの思想体系における、知覚とその対象の瞬間性の関係について詳細に論じた。その際、プラジュニャーカラグプタの理論が、ニヤーヤ学派の学匠バッタ・ジャヤンタがその著作『ニヤーヤ・マンジャリー』において批判する仏教徒説のモデルである可能性を指摘した。『ニヤーヤ・マンジャリー』においてバッタ・ジャヤンタは、知覚によってその対象が瞬間的であることが証明されるという仏教徒の立場、すなわちプラジュニャーカラグプタの理論を反転させ、逆に、知覚は、瞬間的に働くものではあるが、その対象が恒常であることを証明するという立場を取る。この両者の立場の相違、そして双方の相対立する諸論拠は、現代哲学における、知覚と時間認識をめぐる諸理論にたいして興味深い視点を提供するものであろうと思われるが、2022年度に最終年度を迎える本研究では、その点まで研究を深めることは出来なかった。 以上の点は残念であるが、現代形而上学の時間論との対照、とりわけstage theoryとの対照において、インド仏教哲学の刹那滅論を論じる、或いは、現代形而上学が設定した理論の枠組みの中で、刹那滅論を論じ、その特徴を明らかにするという本研究の第一の目的は概ね達成できたと考える。本研究は、本邦のこれまでの仏教論理学・認識論研究の中では、異色のものと言えるが、本研究で採った方法論は或る程度有効なものであったと言え、その意味において本研究は、これからの仏教認識論・論理学研究に新たな視座を提供できたものと考える。
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