2018 Fiscal Year Research-status Report
大阪漢学と近代企業家に関する研究―泊園書院と重建懐徳堂を中心として
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17K18250
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
横山 俊一郎 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (60759827)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 泊園書院 / 企業家 / 星島謹一郎 / 中野寿吉 / 褒章 / 済生会 / 日本赤十字社 / 関東大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、泊園書院出身の「企業家」のうち、備前国児島地方の地主に注目し、彼らの思想および実践の連関性を考察するとともに、総理府賞勲局編集の『紅緑藍綬褒章名鑑』および『紺綬褒章名鑑』を典拠として、泊園門人を輩出したイエの成員のうち、褒章を受章した者の業績を調査し、その全体像の把握に努めた。 明治期に活躍した泊園門人の星島謹一郎と中野寿吉は、地元の銀行業、鉄道業、紡績業の企業運営に関与する実業家であったが、星島は港湾建設や干拓事業、中野は学校設立や紛争調停に関与するなど、ともに地域の利益にかかわる活動に情熱を傾けている。また彼らは戸長村長もしくは地方議員としても活躍しており、星島は国政進出、中野は政党支援を行うなど、ともに政治家としての一面を持っていた。 しかし、彼らの漢学に対するスタンスは微妙に異なっており、中野の場合、漢学を学問として捉え、それを踏まえたあるべき社会秩序を構想し、実際にも自己を含めた組織の統治強化に役立てる一方、星島の場合、地元名士たちと交流する際の趣味として漢学を捉え、またそのことによって事業活動に不可欠な社会結合や情報交換の場を獲得していたと考えられる。 また、泊園門人を輩出したイエの成員には、①緑綬褒章(実業精励)、②藍綬褒章(公益振興)、③紺綬褒章(公共寄付)の受章者が多数いたが、このうち③の合計受章数が上位7家にランクするイエに注目すると、7家中4家は①も受章しており、「実業家」かつ「篤志家」タイプが多かったことが確認できる。さらに彼らの寄付先を見ると、恩賜財団済生会・日本赤十字社・関東大震災関係が最も多く、次いで彼らの出身地もしくは活動地における教育・医療・治水事業などが多数見受けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、泊園書院出身の「企業家」、とりわけ大阪商人および地方地主の両者の活動実態が次第に明らかになってきた。とくに関西大学アジア・オープン・リサーチセンター(KU-ORCAS)のプロジェクトとしてすすめている泊園門人データベースの構築にかかわることで、門人の個人ではなく集団としての実践特性をつかむことができた。そのほか、当初予期していなかった取り組みとして、二松學舎大学主催の漢学者記念館会議、渋沢栄一記念財団助成の研究会(研究課題:近代東アジアにおける実業家の果たした役割に関する総合的研究)への参加ということもある。これらの経験は「漢学塾」と「東アジアの実業家」をキーワードにみずからの研究の進展を図る大きなチャンスだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
明治生まれの泊園門人の石濱純太郎は「企業家」の子弟であるが、大正末期から昭和前期にかけて泊園書院の経営にたずさわり、書院の漢学を近代的なそれへと発展させた人物である。渋沢栄一記念財団助成の研究会では、この石濱に関する研究発表を行なったが、その際に得られた明治・大正・昭和をつらぬく視座を今後の研究に生かしたい。また、本研究課題の総仕上げともいうべき重建懐徳堂の設立運動を考察するに当たっては、それに関与した泊園門人のうち、上述した「実業家」かつ「篤志家」タイプの門人に注目したい。なぜなら、企業運営といった営利事業のみならず教育・福祉・文化事業など非営利事業にも熱心な彼らこそが同運動を支えた人々であったと想定され、彼らの思想および実践を考察する価値は十分にあると思われるからである。
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Causes of Carryover |
泊園門人データベースの構築過程で得られた成果を踏まえて、個人としての大阪商人の考察ではなく集団としてのそれの考察に切り替えた結果、物品費および旅費が少額にとどまったためであるが、この未使用分は次年度において重建懐徳堂の設立運動にかかわった泊園門人を複数名考察し、その成果を含めた総括論文を作成することによって消費される予定である。
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Research Products
(7 results)