2017 Fiscal Year Research-status Report
ラマン分光法を用いたマウス胚の分子レベルでの卵質評価
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17K18267
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
石垣 美歌 関西学院大学, 理工学部, 助教 (60610871)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マウス胚 / 卵子成熟 / ラマン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究として、マウス卵子成熟に伴う細胞内物質の変化と受精能・発生能との関係性をラマン分光法を用いて分子レベルで評価した。 マウス卵子はhCGホルモンによる過排卵処理したICRマウスから採取した。排卵された卵子のうち、hCG投与後15時間の卵子が受精能・発生能が高いことが知られている。そこで、hCG投与後13時間、15時間、18時間、24時間後の卵子を採取し、ラマン測定を行った。測定には、CO2インキュベータ搭載の顕微ラマンシステムを用い、37℃に保って測定を行った。785 nmの励起波長、40倍水深レンズを使用し、サンプルポイント60 mW、露光時間30秒で測定した。そして測定データに対して、卵子成熟に伴う卵内物質の変化を主成分分析(PCA)によって分析し、卵子成熟に伴う生体分子組成の変化を導出した。その結果PC4で時間経過に伴い、4つデータセットに分かれた。PC4のローディングでは、リン酸に由来するバンドが検出され、15時間の胚で均一的にリン酸濃度が高く、またタンパク質がよりリン酸化されていることを示唆する結果が得られた。これは細胞質成熟に伴うタンパク質のリン酸化を検出している可能性がある。また、PC1のローディングには不飽和脂肪酸由来のスペクトルパターンが表れており、24時間の胚で脂質の相対濃度が高くなっていることが示された。さらにレーザー照射による影響を評価するため、レーザー照射後の卵子に体外受精を施し、培養してその後の発生過程を観察した。その結果、胚盤胞への発生は良好な結果を得ることができ、レーザー照射による有意な影響は検出されなかった。 以上、卵子成熟に伴う生化学的分子組成変化をラマン分光法を用いて非侵襲的にモニタリングできる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究結果は、まもなく学術雑誌に投稿予定である。卵子成熟過程を評価する上での重要なバイオマーカーを分光学的に同定することができ、新規性、独創性のある結果が得られていることから、研究は大いに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、マウス胚のレーザー侵襲性に対する詳細な評価を行う予定である。レーザーの照射強度、照射時間を変化させつつマウス胚に照射し、その発生率をモニタリングすることで、より侵襲性のないレーザー照射条件を求める。 次に、凍結融解過程を経た胚と、経ていない胚の卵内分子組成の違いを分析し、凍結融解がマウス胚に与える影響について評価する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費として申請していた経費が、大学の研究助成により使用せずに済んだ経緯があるため差額が生じた。来年度はさらなるマウス胚の実験項目を予定しており、差額分と併せて多くの実験を行うことを計画している。
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Research Products
(3 results)