2017 Fiscal Year Research-status Report
Developing A Methodological Framework for Digital Archiving in Depopulated Small Villages
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17K18280
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
藤本 悠 奈良大学, 文学部, 講師 (50609534)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | むらおさめ / デジタル・アーカイブ / ISO19100シリーズ / 人口問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代日本における社会問題のひとつに人口問題がある。特に地方においては「過疎」という言葉を通じて論じられることが多く、1960年代以降、様々な分野において議論され続けてきた。しかしながら、根本的な解決に至らないまま、農林漁業を主要産業とする数多くの地方小集落が消滅の危機に瀕しているのが現状である。この問題に対して、作野広和は「むらおさめ」という考え方を提唱し、消滅を免れ得ない集落においては潔い終焉を認めつつ、その集落が存在した記録を後世に遺すという方向性を議論した。 「むらおさめ」の考え方の是非は置いておいたとしても、消滅の危機に瀕した集落の記録をデジタル・アーカイブとして遺すことは極めて重要な課題であり、その必要性は様々な分野において論じられている。しかしながら、この課題に取り組む上での具体的な方策は議論されていないのが現状である。特に「費用に関わる課題」、「技術に関わる課題」、「人的資源の確保に関わる課題」、「共有化に関わる課題」の4つの課題は避けて通ることはできない問題であり、これらの課題に対する方法は早急に検討する必要がある。 本プロジェクトではこれらの課題を解決するために低コストで汎用的なデジタル・アーカイブの方法を確立を目指している。平成29年度には「集落アーカイブ」のための概念的な枠組みを整理するとともに、国際標準ISO19100シリーズに準拠したデータベース・スキーマの設計、デジタル・アーカイブ支援システム「Survey Project Manager」および「Survey Data Collector」の開発を行い、調査対象地域のひとつである島根県益田市匹見町において実践的な取り組みを行った。また、構築したデジタル・アーカイブを用いた分析方法の検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1.国際標準ISO19100シリーズに準拠した応用スキーマの設計、2.応用スキーマに準拠したデジタル・アーカイブシステムの開発、3.調査対象地域の事前調査の実施、の3項目が主たる課題であった。若干の計画変更はあったものの、これらの課題は計画通りに進めることができ、全体として「当初の計画以上に進展している」状況である。 まず、応用スキーマの設計に関しては申請者が考案した汎用の応用スキーマ「Simple Object Profile(SOP)」の設計を完了し、デジタル・アーカイブシステムとして「Survey Project Manager」および「Survey Data Collector」の開発を行った。当初はWebベースのシステム開発を進める予定であったが、現場での作業に特化した「Survey Data Collector」も新たに開発した。安価な民生機材を用いたデジタル・アーカイブの方法や低コストなライティングに関しても新たなアプローチによって低コスト化を実現し、H30年度に予定していたデジタル・ワークフローも確立されつつある。 調査対象地域の事前調査では島根県益田市匹見町の小原集落にて実験的な取り組みを行い、三名の住民の写真資料のデジタル・アーカイブおよび音声インタビューの録音を行った。一方、もうひとつの調査対象地域の鹿児島県三島村では役場や地域住民との交渉を終え、新年度から本格的にデジタル・アーカイブの構築作業に入る予定である。なお、これらの成果については地理情報システム学会およびじんもんこん2017にて報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度にはH29年度の計画に加えて、H30年度に計画していた内容を前倒しに進めることができ、当初の計画以上に進展した。しかしながら、デジタル・アーカイブ支援システム「Survey Project Manager」と「Survey Data Collector」の二つのシステムは同じ応用スキーマに基づいてはいるものの、連携機能が未開発の状態になっている。また、開発したシステムは機能が充実するにしたがって、不具合が増加し、結果として不安定な側面もある。誰もが扱うことができる仕組みを構築するためにはこれらの問題を修正する必要がある。現地での事業実施に関しても、島根県益田市匹見町での取り組みは始まっているものの、鹿児島県三島村での取り組みは本格的には始まっていない。三島村での事業実施では機材の輸送などの新たな問題があり、そうした問題を解決することが望まれる。 こうした既知の問題に加えて、最終年度となるH31年度には一連の手法のマニュアル化や持続的な事業継続に向けた取り組みを行う予定であり、最終年度の目標を念頭に置いた上でH30年度の事業実施を行う必要がある。また、デジタル・アーカイブの対象資料に関しても、現在は写真資料を中心に扱っているが、写真資料以外にも立体資料や音源、動画などにも対象を広げる必要があると考えているため、そうした資料のアーカイブ化の方法についても検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の最も大きな要因となったのは物品購入費である。当初の計画では音声関連のデジタル・アーカイブも想定していたが、本年度は画像のみに焦点を当てたため、関連する機材の購入を見送った。また、旅費に関しては移動方法や宿泊施設の確保の段階で様々な工夫を行ったため、若干の残額が生じることとなった。ただし、その残額分が人件費・謝金およびその他の項目で上限を超えた分でほぼ相殺されており、誤差範囲の中であると考えている。次年度使用額に関しては平成29年度に見送った物品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)