2017 Fiscal Year Research-status Report
経済的アプローチからみた新たな家族制度とそれに対応する租税法の探求
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17K18281
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
加藤 友佳 岡山商科大学, 法学部, 准教授 (50737723)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 租税法 / 家族法 / 国際私法 / 配偶者 / 借用概念 / 同性婚 / パートナーシップ / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多様化する家族の形と租税法とのかかわりに焦点をあて、各国の新たな家族制度とそれに伴う租税法の整備について整理・分析を行ったうえで、わが国の租税法が各国の家族制度にどのように対応すべきかについて、その可能性を探るものである。本年度の研究では、アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダの同性婚や登録パートナーシップ制度を比較検討し、それに伴う租税制度の整備を中心とした法制度の抽出を行い、さらにわが国における配偶者概念との等価性について検討を進めた。 租税法の借用概念について渉外関係が問題になる場合の性質決定のアプローチには、準拠法上の性質や法制の仕組みに基づいて判断する外国私法準拠説、わが国の私法上の性質決定を基にそれと同等であるか否かで判断する内国私法準拠説、そして外国私法準拠説と内国私法準拠説の併用アプローチがある。本研究では、配偶者概念については同性婚や登録パートナーシップ制度、相続概念についてはジョイント・アカウントを取り上げて、外国私法準拠説と内国私法準拠説の併用アプローチによる統一的な性質決定を試みた。 その結果、配偶者概念および相続概念については、併用アプローチによる性質決定が可能であるとの結論に至った。特に配偶者概念については、同性婚における配偶者はわが国の租税法上の配偶者に該当し、また、各国により制度が異なるパートナーシップ制度においては、公的機関への登録等を要件とする場合のパートナーシップを結んだパートナーはわが国の租税法上の配偶者に該当するとの結論に至った。なお、本年度の研究については、国際取引法学会において発表を行っており、今後論文を取りまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、アメリカ、イギリスを初めとする欧米諸国の同性婚および登録パートナーシップ制度に係わる法制度の抽出し、比較法的研究を行った。 研究会や学会等で複数会議論する機会を得ることができたため、次年度に予定していた渉外関係が問題となる場合の性質決定へのアプローチを具体的に検討することができた。一方で、わが国租税法へのアプローチの探求を先に行ってしまったことから、比較法的研究は必要最低限のレベルにとどまっており、この点の充足を次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たな家族制度の導入に伴う各国の租税法の改正や規定新設を含めた対応を調査・分析し、わが国の租税政策への提言につなげる。まず、異性カップルに認められている配偶者控除を中心とした租税軽減措置の適用という選択肢が、同性カップルには存在しないことによって生じる経済的損失および財産権侵害の認定の有無について、各国の裁判等における議論から家族制度と租税法の位置付けを明らかにする。また、相互扶養義務については社会的な認識が関わるため、社会規範の形成という観点から行政法の知見をまじえて考察を行う。 既存の租税法各種控除の性質および位置付け、さらに各国の新制度に対応する租税制度の研究に基づき、わが国租税法への政策提言に向けた検討を行う。本年度は、現行制度内での性質決定のアプローチの可能性を検討したため、今後は租税法の改正または新条文の導入もあわせた研究を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定だったデータベースを大学が導入したため、東京での学会発表等における使用を予定している。
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Research Products
(3 results)