2017 Fiscal Year Research-status Report
鼻腔から脳脊髄液を介した脳実質への薬物送達経路の解明と治療効果の検討
Project/Area Number |
17K18285
|
Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
井上 大輔 就実大学, 薬学部, 助教 (50550620)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 経鼻投与 / 脳内送達 / 中枢系疾患治療 / 脳内液体循環 / 薬物送達システム |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢系薬物の経鼻投与後の薬物動態情報を得るため動物実験を行い、脳内濃度時間推移から脳移行動態を解析した。血液脳関門(BBB)透過性が良好なcaffeineは経鼻投与直後から脳移行が観察され、静脈内投与後の脳移行も良好であった。Caffeineは血中移行後BBBを通過し脳移行する経路と鼻腔から脳への直接移行経路の両経路を介して脳内送達される結果が得られた。一方、sulpirideは経鼻投与直後から脳移行したが、静脈内投与の脳移行は悪く、直接移行率(DTP)は90%以上でありほぼ全てが直接移行経路を介した脳送達と考えられた。これはSulpirideの難BBB透過性に起因すると考えられた。 続いて、低侵襲的かつ1個体から脳内濃度推移を観察可能な脳内微小透析(MD)法を利用した経鼻投与後の脳内動態評価を試みた。Caffeine及びsulpirideでは脳内濃度推移と同様の結果が得られ、MD法により経鼻投与後の脳内動態を評価可能であった。MD法による脳内動態解析により経鼻投与後のfluoxetineの脳送達性を評価した結果、高いDTPが得られsulpirideは経鼻投与後に直接移行経路を介して効率的に脳内送達されることが示された。 また、経鼻投与後の脳内送達に対する脳内液体循環システムの影響を評価するため、脳内液体循環が活性化される麻酔下ラットにおける脳移行性を覚醒下と比較した。麻酔下では、経鼻投与後の直接移行経路を介した脳内送達が促進され、鼻腔からCSFに取込まれた薬物がCSFと共に脳内を循環し、脳実質内部まで送達されることが示された。 これらの検討結果から、薬物の脳内送達法として経鼻投与が極めて有用なツールであることが示され、また、経鼻投与時に脳内液体循環システムを考慮することで、より高効率に脳内送達でき得ることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に基づき、薬物動態評価の結果が概ね得られているが、当初予定していた薬物の一部は未だ結果が得られておらず、現在検討中である。脳内マイクロダイアリシス法を利用した経鼻投与後の脳内動態を定量評価する方法を確立する際に、回収液中の薬物濃度が極めて低く、定量性の確保が困難であったため時間を要した。現在は、LC/MS/MSを利用した微量分析により、低濃度サンプルの定量が可能な分析方法を確立できたため、問題は解決している。本年度の治療効果の検討と併せて、未検討の薬物の動態評価を検討することで、これまでの遅れを取り戻すことは可能と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
経鼻投与後の脳内薬物濃度の定量は、当初、LC/MS/MSを用いることで可能と考えたが、経鼻投与後の脳実質内、脳脊髄液中、微小透析回収益中の薬物濃度は極めて低く、サンプルの前処理法やLC/MS/MSの定量条件を確立するために時間を要した。経鼻投与では、鼻腔の体積から投与液量が制限され投与薬物量をあまり多くできないため、定量性の問題が課題となる。薬物の定量が可能か否かを十分に事前検討した上で評価のモデル薬物を選択する必要があり、今後は定量が可能な薬物のみを検討する、あるいは、定量可能な他の候補薬物に変更することも考えている。薬物動態学的根拠に基づいた薬物治療法の確立を目指しているため、定量性を確保したモデル薬物の再選定が重要と思われる。
|
Causes of Carryover |
薬物動態評価を検討予定であった薬物5種のうち2種に関して未だ評価が完了しておらず現在検討中であるため、未検討分の動物実験費用として、次年度使用額が生じた。 平成30年度も引き続き、残りの薬物について薬物動態評価の検討を進める予定であり、当初の予定通りに未検討分の動物実験費用として使用する予定である。 平成30年度分費用は変更なく予定通りに検討を進める。
|