2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18286
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
鈴木 亜由美 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (40435045)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 情動調整方略 / 就学前児 / ネガティブ情動 / 言語 / 心の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,就学前期における子どもの情動調整方略の発達的特徴について検討するものである。当該年度は,就学前児の行動的方略,認知的方略の両者を含む情動調整方略のレパートリーを測定する課題を開発し,これらの情動調整方略の個人差に,言語能力や「心の理論」などの他の認知能力がどのように関連しているのかを明らかにすることを目的に個別調査を行った。 認定子ども園の4-5歳児,5-6歳児クラスに在籍する48名(男児20名,女児28名)に対して,情動調整方略課題として,登場人物に4種類のネガティブ情動(悲しみ,恐れ,怒り,悔しさ)が生じる場面を図版で提示した後,自由回答による情動調整方略,認知的方略(再評価,気晴らし,反すうからの選択と理由)について尋ねた。合わせて「PVT-R絵画語い発達検査」と,「TOM心の理論課題検査」の中から,はさみ課題(中身変化)とクレヨン課題(移動)を実施した。その結果,自由回答による情動調整方略は,行動的方略,認知的再評価,社会的サポート,抑制の4つのカテゴリーに分類されたが,年齢・性別にかかわらず行動的方略の報告が他の3つよりも有意に多いことがわかった。認知的方略の選択は「反すう」が有意に少なく,選択理由では登場人物の心的状態に言及した理由づけだけでなく,事実のみに言及しているものや,矛盾した理由づけも多かった。また,心的状態に言及した理由づけの頻度と,言語課題の得点の間には,月齢を統制した上でも有意な相関が見られた。これらの結果から,就学前児にも認知的情動調整方略についての理解が見られるが,この理解は発達の途上であると考察された。 以上の研究成果については,日本発達心理学会第29回大会にてポスター発表を行い,現在学会誌への投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画においては,今年度は研究1として,就学前児の情動調整方略レパートリーを検討する指標の作成と,日常場面での行動(保育者評定)との関連を求めることを予定していた。しかしながら研究の準備段階において,日常場面での行動を測定する尺度について再検討する必要性が生じたことから,この計画を変更し研究2として予定していた認知的情動調整方略の生成に関わる要因(言語課題,心の理論課題)との関連の検討を実施することにした。このように研究の実施順序に変更があったものの,1年間の実施状況としてはおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作成した就学前児の情動調整方略レパートリーを検討する指標と,子どもの日常場面での情動調整行動との関連を検討する。当初は子どもの日常場面での情動調整行動を測定する指標としてC-TRF(子どもの行動チェックリスト,保育士・教諭用)から抜粋した20項目程度を用いて,担当教諭に各対象児の行動を評定してもらう予定であったが,研究を進めていく中で子どもの自己調整行動についてより多面的にとらえる必要性があると考えた。そこで情動調整を必要とする実験場面(a locked-box taskなど)での行動観察と,養育者による行動評定(CBCL:子どもの行動チェックリスト)を,仮想場面による情動調整方略課題と合わせて実施する。研究の実施にあたり,研究代表者の所属大学の実験施設を用いて,研究協力者として地域の就学前児とその養育者を広く募る予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた物品等は一通り購入できたため。次年度は主に研究協力者募集のための費用や謝金等に使用する予定である。
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