2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18286
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
鈴木 亜由美 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (40435045)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情動調整 / 就学前児 / 認知的方略 / 心の理論 / 言語発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,就学前児の情動調整方略の発達的特徴について検討するものである。2019年度は,2017-2018年度に行った課題を修正し,就学前児の行動的方略,認知的方略の両者を含む情動調整方略のレパートリーをより正確に測定すること,また2種類の情動調整方略のうち,認知的方略と誤信念課題の得点との間のみに関連が見られるであろうという仮説を検証することを目的に個別調査を行った。 認定子ども園の4-5歳児クラス,5-6歳児クラスに在籍する計57名に対して,主人公に悲しみと怒りが生じるシナリオ(各2種類)を図版で提示した後,行動的方略と認知的方略のそれぞれについて,自由回答と選択・再生への反応から,得点化を行った。合わせて「PVT-R絵画語い発達検査」と,誤信念課題を実施した。 その結果,4-5歳児より5-6歳児,怒り場面より悲しみ場面,認知的方略よりも行動的方略の方が情動調整方略課題の得点が高いことがわかった。また,誤信念課題と情動調整方略課題の相関は,行動的方略,認知的方略ともに見られたが,これらは主に月齢と語い力に媒介されるものであることが示された。これらの結果には認知的方略の得点の低さが影響していると考えられ,対象者や実験手続きにさらなる改善が必要であると考察された。 以上の研究成果については,日本発達心理学会第31回大会にてポスター発表を行った(新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から,大会は成立したものとするが,開催期間に会場には参集しないこととなった)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画においては,現時点で就学前児の情動調整方略レパートリーを検討する指標の作成とそれらの情動調整方略の生成に関わる個人内要因(言語課題,心の理論課題)の検討(研究1),就学前児の情動調整方略課題におけるレパートリーと日常場面での行動(養育者評定)との関連の検討(研究2),保育場面に見られる情動調整方略の検討(研究3)という3つの研究を終えている予定であった。しかしながら,研究1・研究2ともに用いた課題や尺度の内容について不十分な点があったことから,2019年度は課題を修正して再調査を行い,研究3については研究期間を1年延長して実施することとした。 以上の点から,進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は保育場面の観察を用いて就学前児の日常における情動調整方略の検討を行う予定であったが,新型コロナウィルス感染拡大に伴い,年度内の園での研究受け入れが困難であると考える。そのため,2020年度は研究計画を変更し,2019年度に行った調査のデータを再分析して論文を執筆すること,さらに文献研究を行い就学前期の情動調整に関するレビュー論文を執筆することとする。
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Causes of Carryover |
研究の進行の遅れにより,物品購入が必要とならなかったことや,新型コロナウィルス感染拡大の影響で学会出張が取りやめになったことによるものである。次年度の物品費または人件費・謝金として使用する。
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