2017 Fiscal Year Research-status Report
エクソソーム二重膜上に存在する疼痛増悪因子の同定と新しい疼痛治療戦略の創出
Project/Area Number |
17K18298
|
Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
濱村 賢吾 第一薬科大学, 薬学部, 助教 (30756466)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エクソソーム / 神経障害性疼痛 / ホルマリン誘発性侵害刺激行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛とは、神経細胞の損傷が原因となって起こる難治性の慢性疼痛である。現在、全世界で数千万人にものぼる人々が神経障害性疼痛に苦しんでいる。鎮痛薬として、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) やモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬が従来から使用されているが、治療抵抗性を示すことが多い。したがって、効率的な新薬の開発や治療法の確立が望まれている。 エクソソームは血液などの体液に含まれる直径40-150 nmの脂質二重膜の小胞である。近年、疼痛時の血中エクソソームに存在する物質が、疼痛強度の指標となることが示唆されている。しかし、エクソソームと疼痛発症および疼痛強度の増強との関連性は不明であった。我々はこれまでに、神経障害性疼痛モデルの坐骨神経部分結紮(Partial sciatic nerve ligation: PSL)マウスを用い、PSLマウス血清由来エクソソームの侵害刺激行動に対する影響を検討した。その結果、現在までにエクソソームは侵害刺激行動の発症過程に関与しないこと、およびPSLマウス血清由来のエクソソームは、偽手術 (Sham-operated) 群と比較し低濃度ホルマリン誘発性侵害刺激行動に対して有意な時間延長を認めることを明らかとした。 そこで本研究では、PSLマウスのエクソソームに着目し、疼痛強度を増強させるエクソソーム二重膜上の因子を同定すること、およびエクソソーム中の疼痛強度増悪に関与する二重膜上の因子を排除することで痛みを緩和できるという新規治療標的の確立を目的としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エクソソームの侵害刺激行動増強作用における因子を同定するために、PSLマウス血清中エクソソームの二重膜上に発現する因子をトリプシン処理にて削いだ “Shaved Exosome” を作成した。動的光散乱法による粒子径測定の結果、トリプシン処理により平均粒子径の減少を確認できた。この“PSL Shaved Exosome”は、低濃度ホルマリン誘発性侵害刺激行動の延長が引き起こされなかった。つまり、PSLマウス血清由来のエクソソーム二重膜上に存在する因子は膜タンパク質であることが示唆された。 しかしながら、エクソソーム二重膜上の膜タンパク質の同定には至っていないのが現状である。エクソソーム二重膜上の膜タンパク質同定が現在まで実現していない背景には、血清由来のエクソソームが持つ問題が挙げられる。プロテオーム解析により同定を試みる際、エクソソームの精製純度が重要である。しかし、超遠心法によって分離したエクソソームの粒子径を測定したところ、血清からエクソソームを単離する場合、超遠心法のみでは200~1000nmの物質(不純物)が存在しており、プロテオーム解析に不適であることが明らかとなった。したがって現在、エクソソームの精製純度を高めるために、超遠心法と既報の単離方法とを組み合わせてプロテオーム解析に向けた最適な条件を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、エクソソームの精製純度を高めるために、超遠心法と既報の単離方法とを組み合わせてプロテオーム解析に向けた最適な条件を検討する。200~1000nmの物質(不純物)は、既存のエクソソーム抽出方法の組み合わせや、サイズ排除クロマトグラフィーにて取り除くことができると考えている。 次に、エクソソーム表面上のタンパク質ライブラリーを構築し、構築したライブラリーを用いて質量分析法にて解析することで、膜タンパク質Xを同定する。なお、質量分析は外部委託にて行う。その後、エクソソーム二重膜上の疼痛強度増悪に関与する膜タンパク質Xが新規治療標的になることを、阻害剤を投与した上で実証していく。
|