2018 Fiscal Year Research-status Report
老年期クローン病患者の療養生活の実際および看護実践開発に向けた基礎的研究
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17K18304
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Research Institution | The Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing |
Principal Investigator |
山本 孝治 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 助教 (40781901)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 加齢 / セルフマネジメント / セルフモニタリング / 客観的な観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は以下の3点を実施した。 ①老年期クローン病患者の経験およびニーズを明確にすることを目的に、6名の患者にインタビューを実施した(平成29年度に2名実施しており、計8名となる)。分析方法は逐語録を作成した後、コード化し、個人毎にサブカテゴリーを抽出し、関係性を図式化した後、全対象者で類似性、相違点を比較しカテゴリーを抽出した。分析の結果、インタビューの時点で対象者は加齢による影響によりADLやセルフマネジメントに支障をきたしていなかった。しかし、今後年齢を重ねることで下肢の衰えや認知機能の低下が生じ療養に影響をきすと予期しており、すでに対策をとっていた。 ②①について3名の老年期クローン病患者のデータを基にして、「老年期クローン病患者のニーズの明確化(第1報)」として研究結果をまとめ、平成30年11月に開催された第9回日本炎症性腸疾患学会学術集会において発表した。 ③看護師が捉える老年期のクローン病患者に対するケアの課題を明らかにすることを目的に、看護師5名を対象にインタビューを実施した。分析は①の方法に準じて実施した。結果、看護師は老年期患者について、加齢や長期罹患がセルフケアに影響しやすいことを捉えており、セルフモニタリングの低下や症状を正確に伝達できないことをケアの課題として認識していた。老年期クローン病患者の特徴を踏まえた問診と客観的な観察を重視したフィジカルアセスメントや家族を含めたセルフケア支援の重要性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度より難渋していた老年期患者の家族については平成30年度も対象者の選定ができず、インタビューは実施できなかった。その理由として、インタビューを実施した患者はすべて一人での通院であり、家族は同行しておらず協力を依頼できなかった。この対策として、炎症性腸疾患(以下、IBDとする)の患者会の全国組織であるIBDネットワークに協力を依頼し、患者・家族について研究協力の応募(会報誌に掲載)を試みたが、応募はなかった。更に九州地区の患者会に紹介も依頼をしたが、患者会に入会する65歳以上のクローン病患者およびその家族がおらず、想定以上に家族の対象者選定は困難を極めた。以上を踏まえ、研究実施計画および体制を見直し、家族へのインタビューは中止し、老年期クローン病患者のニーズを明確にすることを本研究の主眼にすることにした。よって、クローン病患者の対象者数を増やし8名にインタビューを実施することにした。 医師に対するインタビュー、フィールドワークについても実施できなかった。理由として、研究協力病院の診療体制の変更と当初依頼をしていた医師の異動があったこと、老年期患者来院時に研究者がタイミングを合わせてフィールドに入ることに困難を極めスケジュール調整ができなかった。以上を踏まえ、以下のとおり研究実施計画および体制を見直した。①看護師のインタビュー対象者の人数を予定より増やし5名に行うことにした。②幅広い知見を得るため、平成31年度(令和元年)に九州に限定せず全国のIBD専門病院で多くのクローン病患者に対しケアを実践している看護師を召喚し、「老年期クローン病患者に対する看護の方向性(看護指針)」を検討する会を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成31年度(令和元年)は、以下の4点を実施する。 ①インタビューで明らかになった「老年期クローン病患者のニーズ」と「老年期クローン病患者のケアの課題」について比較検討し、「老年期の特徴をふまえたクローン病患者に対する看護」を明確にする。 ②①の結果を基にして、全国のIBD専門病院で多くのクローン病患者に対しケアを実践している看護師を召喚し、令和元年6月に「老年期クローン病患者に対する看護の方向性(看護指針)」についての検討会を実施する。 ③以下の3学会で研究結果を発表する。1)第45回日本看護研究学会(令和元年8月開催)「老年期クローン病患者のニーズの明確化(第2報)~加齢による影響、心理的変化、ニーズに焦点をあてた分析~」、2)第24回日本難病看護学会(令和元年8月開催)「老年期クローン病患者に対するケアの課題の明確化」、3)第10回日本炎症性腸疾患学会(令和元年10月開催)「老年期クローン病患者に対する看護実践の検討~老年期の特徴を踏まえた支援~」。共に、質疑応答でのディスカッションを受け、分析結果の修正、研究結果および考察の参考にして論文としてまとめる。 ④①~③をまとめ、実際の臨床現場で活用できる報告書を作成し、研究協力病院をはじめとした全国のIBDの専門病院に配布する。
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Research Products
(1 results)