2017 Fiscal Year Research-status Report
学校組織における分散型リーダーシップを下支えする管理職教員の役割に関する研究
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17K18314
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Research Institution | Shujitsu Junior College |
Principal Investigator |
鎌田 雅史 就実短期大学, 幼児教育学科, 准教授 (10610040)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分散型リーダーシップ / 組織市民行動 / 学校組織マネイジメント / 教員の自律性 / エンパワーメント / 組織風土 / 制御焦点 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、主に文献調査を中心に研究を進めている。これまで継続してきた組織市民行動に関する理論研究を基礎としながら、本科研の課題である分散型リーダーシップ理論との関連について理論的に検証した。これら2つの概念は、ともに組織成員の自律的な組織への貢献に着目する理論であり親和性が高いが、個々の組織貢献の集積を検討する場合、成員間のインタラクションや、それぞれの成員の行為が持つ志向性の関係を勘案する必要性があり、その点において分散型リーダーシップのパースペクティブから得られる示唆は大きい。 本年度は一般的に、ポジティブな行動として暗黙裡に捉えられやすい組織市民行動のダークサイドに着目し、欧米諸国での理論研究に基づき、組織マネイジメントの視点から理論的枠組みを提示した(鎌田 (2017) 組織市民行動の副次的な反作用に関する理論的考察 就実論叢 47, 157-167.)。さらに、昨年度まで助成を受けていた科学研究費補助金採択課題(26870804)の調査データを再分析し、エンパワーメントリーダーシップの視点から、教員の自発的組織貢献を促す組織づくりの在り方を模索した。この結果については、教育心理学会59回総会(鎌田雅史 2017 教員による自律的貢献を促す学校組織特性Ⅰ日本教育心理学会第 59 回総会発表論文集, 345)および社会心理学会58回大会(鎌田雅史 2017 教員による自律的貢献を促す学校組織特性Ⅱ 日本社会心理学会大会発表論文集 228)において発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は理論的研究を中心に進め、ポジティブな行動として暗黙裡に捉えられやすい組織市民行動のダークサイドに着目し、欧米諸国での理論研究に基づき、組織マネイジメントの視点から理論的枠組みを提示した(鎌田 (2017) 。組織市民行動の副次的な反作用に関する理論的考察 就実論叢 47, 157-167.)。さらに、昨年度まで助成を受けていた科学研究費補助金採択課題(26870804)の調査データを再分析し、エンパワーメントリーダーシップの視点から、教員の自発的組織貢献を促す組織作りの在り方を模索した。この結果については、教育心理学会59回総会(鎌田雅史 2017 教員による自律的貢献を促す学校組織特性Ⅰ日本教育心理学会第 59 回総会発表論文集, 345)および社会心理学会58回大会(鎌田雅史 2017 教員による自律的貢献を促す学校組織特性Ⅱ 日本社会心理学会大会発表論文集 228)において発表を行っている。 これらの研究は、教員の自律性と、組織によるコントロールという一見相反する概念を、どのようにマネイジメントすることが可能であるかについてアプローチするもので、組織マネイジメントによる、組織にとって有益な自律性を促す文脈の構成が中心的な命題となる。本研究においては、校長によるエンパワーメントリーダーシップが、学校組織へのコミットメントや、促進焦点を高めることで組織市民行動を導引する影響が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、本年度に分散型リーダーシップ尺度の開発と信頼性・妥当性の検証に関する調査を実施予定であり、準備が整いつつある。 最初の調査実施は、本年度7月ごろを考えている。既に、大まかな調査デザインは出来上がっている。分散型リーダーシップを、他の類似するリーダーシップ概念と関係性を明確にしながら弁別的に測定する尺度開発を志向しているため、収束的妥当性および弁別的妥当性を検討するための変数を調査に組み込む予定である。現在のところ共有リーダーシップ、チームプロセス等の変数が候補として挙がっている。今後、研究協力者や有識者と相談しながら、よりよい調査実施に向けて励んでいきたい。 調査は、公立校に勤務する小学校、中学校の現職教員500名ほどを対象とするWeb調査を実施予定であり、楽天リサーチ(株)に協力を得る予定で相談を進めている。公立学校を対象とするため、年初の人事異動による影響が懸念されるため、ある程度組織が安定する時期に調査実施を考えている。 さらに、本研究課題に中心的テーマである、垂直型リーダーシップと分散柄リーダシップの創発的作用の検証については、尺度開発の進展に合わせて今年度末もしくは、次年度中旬に計画している。この点については、現在欧米の先行研究を展望し理論研究を進めながら、研究デザインを推敲している段階である。 これらの調査によって得られる知見は、学会誌および大学紀要等の学術論文として取り纏めて公表し、関連学会で成果発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、当初郵送法による調査を検討していたが、次年度にWeb調査を行う計画に切り替えたため余剰金額が発生した。また、日本グループダイナミックス学会で発表を計画していた発表を、近県で開催された日本社会心理学会で発表したため余剰金額は発生した。
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