2019 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム安定性の向上によりがん・生活習慣病を予防するゲノムディフェンダーの具現化
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17K18317
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
山本 歩 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60523800)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゲノム安定化 / ゲノムディフェンダー / 健康寿命 / 抗酸化物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的として行うものである。種々の疾病や老化にはDNA損傷やDNA修飾、染色体構造変化や遺伝子突然変異などのゲノム不安定化による遺伝子機能不全が密接に関与していると考えられている。このようなゲノム不安定化を抑制することで遺伝子機能不全を未然に防ぎがん・生活習慣病を予防するという視点からの健康寿命延伸に取り組む。 令和元年度は、平成30年度に引き続き食品として利用されていないが機能性成分を含有している可能性が期待できる新規の海藻由来抽出物(数種)についてゲノム安定化活性を有するかどうか、その予備試験として抽出物そのものの細胞毒性および遺伝毒性(小核形成)をヒトリンパ芽球由来培養細胞株を用いて分析した。その結果、細胞毒性おおよび遺伝毒性の増加が確認されなかった抽出物があった一方、陽性対象として使用したメチルメタンスルホン酸と同程度の高い毒性を有している抽出物もあった。高い細胞毒性、遺伝毒性が確認された抽出物の細胞死形態を分析したところアポトーシスとネクローシスの両方が観察された。強い毒性が確認された抽出物についてはゲノムディフェンダーとしてではなく、新規抗がん剤としての利用が期待されることから、今後、がん細胞増殖抑制活性などの分析を実施していく予定である。また、これまでに報告してきたカシス抽出物のゲノム安定化活性の作用成分を明らかにするために、カシス抽出物に含まれるアントシアニン4種について紫外線障害に対する軽減効果の分析を試みた。その結果、4種類のカシスアントシアニンの中には紫外線照射前処理により紫外線による細胞死および遺伝毒性を抑制するものがあるこが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ゲノム不安定化を軽減する食品および食品成分を発見し作用機序を解明することを目的としており、令和元年度はゲノム安定化促進のメカニズムの解明や成分同定などを行うことを計画していた。そこで構造決定されている未利用海藻由来天然物のゲノムディフェンダーとしての可能性やカシスに含まれる機能性成分として期待される4種類のカシスアントシアニンの紫外線障害に対する機能性の分析などを試みた。細胞毒性・遺伝毒性が確認されなかった抽出部については計画通りゲノム安定化活性の分析を進める予定である。一方、抽出物の中には強い遺伝毒性を示すものが見出されたが、本抽出物については当初の研究計画で想定していた通り、抗がん剤としての可能性などゲノムディフェンダー以外の利用方法の検討に展開していく。これまでの成果から、今後はゲノム安定化とゲノム不安定化の両軸からヘルスケア・ライフケアの可能性を追求していくことの重要性が求められる。 令和元年度は細胞毒性および遺伝毒性の軽減効果の分析だけでなく細胞死形態やタンパク質発現解析など作用メカニズムの検討にも取り組んできた。更に従来の粗抽出部ベースの分析から成分が同定されている化合物での活性分析やメカニズム解析に発展していることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は令和元年度の研究成果をもとに、新規抽出物のゲノム安定化活性を評価するとともに、遺伝毒性が確認された抽出物についてはがん細胞増殖抑制活性分析などにより新規機能性物質としての可能性を検討し、ゲノム安定化だけでなくゲノム不安定化の両軸からの分析を強化する。特に未利用海洋生物由来の抽出物についてはゲノム安定化に対する影響が未知のものが多数あることから、本抽出物の分析を中心に取り組むことを計画している。また従来から実施しているカシス抽出物および4種類のカシスアントシアニンについては紫外線障害に対する効果を追求するととも、作用メカニズムの詳細な分析も試みる。ゲノム安定化活性は過酸化水素により生じる細胞毒性・遺伝毒性に対する抑制効果をTK6細胞およびWTK1細胞(TK6細胞のp53欠損株)を用いて確認する。また、がん細胞増殖抑制活性については死亡率が増加している大腸がん細胞(DLD-1など)に対する活性を中心に分析する。また、ゲノム安定化活性の作用機構を明らかにするために、引き続き細胞死形態の分析やp53などDNA修復や細胞周期調節に関連するタンパク質の発現解析についてwestern blotting や細胞免疫染色による分析を試みる。
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Research Products
(3 results)