2018 Fiscal Year Research-status Report
エマルション液滴のミクロ爆発発生メカニズムおよび液滴飛散挙動に関する検討
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17K18320
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
山田 圭祐 富山高等専門学校, 商船学科, 助教 (40707949)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エマルション燃料 / ミクロ爆発 / 液滴蒸発 / 飛散速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる本年度もエマルションのミクロ爆発挙動を主な観察対象とし、二次液滴の飛散速度の算出にも取り組んだ。沸点の異なる三種類の直鎖炭化水素燃料(n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン)をベース燃料とするエマルションをそれぞれ作成し、液滴の挙動を比較した。 エマルションのベース燃料の炭素数が大きくなるほど、液滴の加熱開始から相分離状態になるまでに要する時間は短くなり、また分裂が発生するまでの遅れ時間も同様の傾向を示した。K型熱電対の測温接点を液滴に挿入し、液滴温度を計測したところ、ベース燃料の炭素数が大きくなるとともに、分裂発生時の液滴温度は高くなる傾向が見られた。ドデカンをベースとするエマルションは、沸点付近まで液滴温度が上昇し分裂が発生したが、炭素数が大きくなるほど沸点と液滴温度の差は大きくなる。また液滴温度履歴からも、温度上昇過程で分裂が発生するようになることを確認した。 分裂発生後、周囲に飛散する二次液滴を高速度カメラで撮影(16,000 fps)したところ、分裂直後には液相と考えられるものが周囲に広がり、徐々に蒸発が進み像が薄くなる様子を捉えた。分裂直後の2コマ間(62.5 us)で二次液滴の前縁部の移動量を計測し、飛散速度を算出した。ベース燃料の炭素数による飛散速度の分布に違いが見られ、テトラデカンが最も速く、次いでヘキサデカン、ドデカンとなった。分裂発生時の液滴温度が最も高いヘキサデカンをベースとするエマルションが、最も速くなると予測していたが、それとは異なる結果となった。分裂発生時の液滴サイズや表面張力など、分裂強度に影響を及ぼす可能性がある因子を検討しているが、メカニズムの解明には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分裂により周囲に飛散する二次液滴の速度算出は、1年目の遅れとなっていた項目であるが、本年度で取り戻すことができた。しかしながら、三種類のベース燃料種で速度の比較を行ったところ、分裂発生時の液滴温度だけでは飛散速度を整理することができず、他の因子を検討する必要があることが分かった。しかしながら、その特定には至っておらず、今後の課題として残っている。 また、当初16,000 fpsでの高速度撮影により、液滴内での気泡核生成過程を詳細に観察することができると予測していたが、1回の撮影につき1フレームのみ、多い時でも3フレーム程度で気泡核の挙動を観察できる程度にとどまっている。気泡核生成過程と二次液滴飛散速度の関連性については、体系的な検討が困難な状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成31年度は、分散水滴の粒度分布がエマルション液滴のミクロ爆発挙動に及ぼす影響を調べる。これまで扱ってきたエマルションは撹拌法で作成したものであり、分散水滴の粒径は数umから30 um程度と分布に幅がある。今年度はエマルションを膜乳化法により作成し、粒径が均一な単分散エマルションを扱う。一般的に単分散エマルションは乳化の安定性が優れているが、これまでの研究で得られた知見から、エマルション液滴の相分離やミクロ爆発挙動に影響を及ぼすと予測される。ベース燃料や界面活性剤の種類と混合割合は同一条件とし、分散水滴の構造を変化させた場合の液滴内部挙動やミクロ爆発挙動の違いを比較する。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していた研究打合せや海外での研究発表を行えず、旅費をほとんど使わなかったために次年度使用額が生じた。この額は旅費として、今年度使用させていただく予定である。
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