2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K18327
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
野尻 紘聖 熊本高等専門学校, 制御情報システム工学科, 講師 (80435487)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 投球動作 / 筋骨格モデル / 回内・回外 / 手指・前腕 / ボール把持力 |
Outline of Annual Research Achievements |
投球動作による傷害の一つである野球肘の傷害予防と早期回復のため、本研究の目的は投球動作や傷害後のリハビリテーションの評価指標を提案することとし、そのための目標は動作の精確な把握と個々人に適切な投球フォームの実現に必要な筋骨格モデルを構築するである。 一年目である平成29年度は、一) 新たな3次元動作解析ソフトウェアの検討と本研究における最適な高速度カメラの導入、二) 3次元の手先力計測のプロトタイプ製作と評価、三) 超音波エコーを用いた前腕の回内・回外における肘側靭帯の挙動計測、四) 筋骨格シミュレーションソフトウェアOpenSimを用いた手指・前腕骨格モデルの構築と五) ボール把持力および挙動計測装置の検討を実施した.いずれの項目も更なる検証および改良の余地があり、少し計画よりも遅れているが、一年目である程度の見通しが立てられたため問題ないと考える。 二年目である平成30年度は一年目の実績をさらに発展させ、1.「投球動作映像の収集」と「3次元動作分析ソフトウェアVisual3Dを用いた投球動作解析」、2.野球ボール把持力およびボール挙動計測システムの構築と評価、3.投球動作における3次元の手先力計測システムの構築、超音波エコーを用いた前腕の回内・回外における肘側靭帯の挙動に基づく骨格モデルの構築、4.ボール把持力や3次元の手先力とモーションキャプチャの結果に基づく筋骨格シミュレーションソフトウェアを用いた手指・前腕骨格モデルの完成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.3次元動作解析ソフトウェアの検討と解像度が高く高速撮影可能なカメラの導入:筋骨格シミュレーションソフトウェアOpenSimとの親和性やデータ解析までの機能の充実による研究の継続性の観点からVisual3Dを導入することに決定した。実際の投球動作データを用いた解析を行い、ソフトウェアの使用方法について知識と経験を積んだ。また、本研究では投球時の指先の挙動を計測する必要があり、所有していたカメラでは性能が不十分であった。そこで、コストと性能のトレードオフを考慮して最適なデジタルスチルカメラを導入し、使用方法について理解した。 2.投球動作における3次元の手先力計測システムのプロトタイプ製作:本格的な3次元の手先力計測の前段階として、100Kgまで計測できるロードセル、ステッピングモータとマイコンボードをそれぞれ3台ずつ用いて、肘から手先までの動作時の手先力を計測できる装置を製作して評価を行った。 3.超音波エコーを用いた前腕の回内・回外における肘側靭帯の挙動計測:超音波エコーを用いて、肘関節角度を0°から90°まで30°ずつ変化させたときの回内・回外時の肘関節内部挙動を撮影した。医学書などを参考に、撮影した画像から肘関節内側の靭帯の挙動を計測した。 4.OpenSimを用いた手指・前腕骨格モデルの構築:OpenSimの公式サイトを参考に、ソフトウェアの使い方を習得した。さらに、手指、前腕骨格を別々にモデルとして作成し、それぞれの挙動のシミュレーションを行った。 5.野球ボール把持力およびボール挙動計測システムの検討:当初は、指先にセンサを取り付けることでボール把持力を計測する予定であった。しかし、計測可能な力の範囲が小さく、また投球動作への影響を考慮し、モーションセンサ、3つの2軸力覚センサ、データ取得および送信用のマイコンボードやバッテリーを内蔵するボールについて検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「投球動作映像の収集」と「3次元動作分析ソフトウェアVisual3Dを用いた投球動作解析」:熊本高等専門学校の野球部をはじめ、熊本県内の高校、佐賀にある小・中学校の野球部の投手に協力を得て投球動作を撮影し、肩関節から手指までの動作解析を行う。 2.投球動作における3次元の手先力計測システムの構築:肩関節から手先までの広範囲の運動が可能なフレームを製作し、前年度に構築したプロトタイプの検証と改良を行う。 3.野球ボールの把持力および挙動計測システムの構築:モーションセンサと力覚センサのデータ取得、マイコンボードからパソコへのデータ送信は完了しており、それらをボールに内蔵する機構の設計および製作と評価を行う。評価方法は、複数個所のボールの硬さと同じ投手による投球時のボールの挙動について通常のボールと比較する。 4.超音波エコーを用いた前腕の回内・回外における肘側靭帯の挙動計測と筋骨格モデルとの統合の検討:在籍する佐賀大学医学部の整形外科の医師からのアドバイスを基に、靭帯挙動の計測をさらに精緻に行う。構築済みの前腕の回内・回外モデルに靭帯モデルを統合し、評価検証を行う。 5.筋骨格シミュレーションソフトウェアOpenSimを用いた手指・前腕筋骨格モデルの検討:手指・手首関節に筋肉モデルを付加し、筋骨格モデルとしてのシミュレーションを行う。また、前腕骨格系に筋肉モデルを付加したモデルもシミュレーションを行い、それらを統合して手指・前腕筋骨格モデルを構築する。なお、筋肉モデルのパラメータ推定には、粒子群最適化手法を用いる。
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Causes of Carryover |
既に、3次元動作解析ソフトウェアVisual3D(約110万円)を見積もりは取得しており、5月中の納品を希望している。また、学会発表を控えていたこともあり、約40万円の旅費分の支出を計画している。具体的には、国際学会(国内での)2件で約30万円、国内学会2件で約10万円を見込んでいる。
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