2018 Fiscal Year Research-status Report
身体の力学的特性と姿勢が歩行中の関節間シナジーに及ぼす影響とその対策の検討
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17K18328
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
垣内田 翔子 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 助教 (90638537)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歩行 / 関節間シナジー / EMG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,歩行姿勢や成長・加齢により変化する身体の力学的構造と歩行中の股・膝・踝の各関節の連携(関節間シナジー)との関係を明らかにすることである.さらに,つまずきによる転倒予防や歩行や歩行中の機能回復のために有効となる,身体の力学的特性を生かしたアシストの方法を検討し,提案することを目的としている. 現在,若年健常被験者が高齢者の姿勢変化として報告されている背中や腰・膝の曲がり姿勢を再現した計測実験を行っている.解析の結果,歩行一周期の中で,股関節に対する足先位置を調整する関節間シナジーが強く働くタイミングについては.直立の通常の歩行姿勢においても腰・膝を曲げた中腰姿勢での歩行においても共通していた.さらに,歩行速度による関節間シナジーの特徴の変化を捉えるため,走行を含めた関節間シナジーの検討を行った.その結果,歩行・走行共に立脚相から遊脚相に向けて相が切り替わる前後や,遊脚中の足部の前方への振り抜きのタイミングで関節間シナジーが強く働くことが明らかになった.また,脚を最も折りたたんだ姿勢で前方へ振り出す速度についても歩行・走行に共通して足先速度を関節間シナジーによって調節されていた.さらに,遊脚相から接地相への着地前後では,一歩毎の姿勢のばらつきが抑えられており,同じ姿勢での着地が行われている事があきらかになった.これらの結果は,歩行・走行において関節間シナジーの活用を同じように使用している事を示唆する結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究により,歩行姿勢,歩行速度によらず,共通した股関節に対する足先位置や速度を調節する関節間シナジーの活用の特徴が明らかになっている.しかし,このような関節間シナジーの発言メカニズムは分かっていない.今年度は表面筋電位計を用いた活動筋電位の変化を調べることにより,股関節に対する足先位置のばらつきを調整するような筋肉の相補的活動について検討を行うことを行ってきた.平成30年度は,計測実験と解析手法の検討を行った.現在,健常被験者の下肢14筋のトレッドミル上での歩行中の表面筋電位を測定し,足先位置を調整するような筋活動について,解析を進めている. 研究代表者の所属先変更により大幅な実験設備の変更が必要になり,現在実験設備の再構築及び実験環境の整備を行った.そのため,これまでの計画通りの実験を遂行することができなかった.しかし,これまでトレッドミルで行っていた歩行計測を平地歩行にすることにより,広い年齢層さらに,高齢被験者の歩行計測に向けた環境整備を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者所属先での実験環境の整備及び年齢層を広げた被験者の募集を行う.成年被験者とは異なる身体的特徴を有する子どもや高齢者を対象にした歩行計測を多く行うことで,被験者数を増やしながら解析を進めていく必要がある.これまで行えていなかった平地での歩行計測環境を整備することで,より広い年齢層の被験者に対応した歩行計測が行える予定である. 強制的に姿勢変化させた歩行の場合には見られなかった歩行中の関節間シナジーの活用の変化が,身体の力学的特徴の異なる被験者でどのような違いがあるかを調べる.これにより,四肢の長さや長期に渡る姿勢の変化,及び日常使う筋活動の違いにより歩行中の関節間シナジーの活用にどのような影響を与えるのかを明らかにしていく.これらの解析結果から,つまずきによる転倒予防や歩行中の関節の機能維持.回復のために有用となる身体の力学的特性を生かしたアシスト手法の開発を行う.
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属先変更に伴い,年度当初予定していた歩行計測実験を遂行することができなかった.次年度は,平成30年に予定していた歩行計測も実施する.その際に必要な経費(実験補助・データ解析補助者に対する謝金,実験消耗品経費,計測データ保存用ディスク費用)に使用する.また,本年度予定した実験データを取得できなかったことにより,研究業績の公表ができなかった.そのため,研究成果発表に関わる経費として次年度使用を行う.
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