2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel therapeutic strategies for triple negative breast cancer
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17K18336
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
丸山 玲緒 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がんエピゲノムプロジェクト, 研究員 (60607985)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳癌 / エピゲノム / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプルネガティブ乳癌(以下TNBC)は内分泌療法や抗HER2療法の適応とならず予後が悪い。これまでEGFRやVEGFR等を標的とした分子標的治療が試みられているが、いずれも良い結果は得られておらず、未だ明確な治療の標的を同定できていないことがTNBCにおける最大の問題点である。TCGAなどの大規模プロジェクトにおいても、ドライバーとなる特異的な異常は同定できておらず、その要因はTNBCがheterogeneousな疾患群であること、すなわち根底にある異常が症例間で極めて多様であることにあると考えられる。我々の先行研究において、TNBCでは未分化な表現型や遺伝子発現様式は共通するものの、エピゲノム、特にスーパーエンハンサーの分布様式に多様性を認めることを明らかにしてきた(Cell Rep, 2015)。本研究ではTNBCに対する新規治療戦略を構築するための基盤データを創出することを目的に、TNBCサブクラス内でのエピゲノム多様性とその意義についての検証を試みている。具体的にはLuminal型、HER2型、Basal型の各種乳癌細胞株パネルに対しATAC-seq法を施行し、オープンクロマチン領域のプロファイリングを行なった。予想された通り各サブタイプ間ではプロファイルに明確な違いを認めたが、Basal型のサブタイプ内においてもその分布様式に多様性を認め、各株の異なる病態が反映されている可能性が示唆された。次にモチーフ解析により各細胞株で活性化している転写因子を推定し、TNBCのエピゲノム多様性に関与しうる転写因子の候補を同定した。また公共データベースの解析を施行し、TNBC症例におけるこの転写因子の発現と予後が関連することを見出した。以上よりこの遺伝子はTNBC症例を層別化するための診断マーカーや新規治療標的の候補になりうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリプルネガティブ乳癌の多様性、不均一性をエピゲノムの観点から評価する目的で、近年開発されたATAC-seq法の施行と改良を試みた。ATAC-seq法は手法が極めてシンプルであるため、微量の検体からでも安定した結果が得られることを確認した。得られるデータはノイズが少なく、既存のChIP-seq法と比較し、エピゲノムに関するより多くの情報を得られることが分かった。またバイオインフォマティクスの手法を駆使することにより、モチーフ解析や転写制御ネットワークの予測など、多くの情報を引き出すことが可能である。本研究を推進する上での解析プラットフォームは確立できたと考える。また実際にこの手法を用いることで、TNBCの一部サブタイプに重要と思われる転写因子の候補を同定できた。よって本研究は現在までおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定したTNBCの一部サブタイプに重要と思われる機能未知の転写因子に関して、分子細胞生物学的手法や生化学的手法によりその機能や病理学的意義について解析を進め、新規治療標的となりうるかの検証を行う。また実際の臨床検体においてその転写因子の発現を免疫染色等で検出することができるか、診断マーカーとして用いることが可能か検証を行う。またATAC-seq法は微量の検体から安定して簡便にオープンクロマチン領域をゲノム網羅的に同定できる手法であり、臨床検体のエピゲノム解析にもっとも適していると考えられる。そこで実際のトリプルネガティブ乳癌検体を用いてエピゲノム解析を行い、各症例における病態を正確に評価し、その情報を元にした症例の層別化可能かどうかの検証を行いたい。
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Causes of Carryover |
本年度はATAC-seq解析や公共データベース解析によるスクリーニング解析を中心に施行した。ATAC-seq解析のプロトコールの改良や、次世代シークエンサーでの解析の工夫を行うことにより、想定よりも低コストで研究を推進できた。その余剰分を次年度に行う機能解析や臨床検体の解析に充てる計画である。
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Research Products
(4 results)