2017 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノムシーケンス解析による癌肉腫の責任遺伝子同定
Project/Area Number |
17K18337
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
後藤 理 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクト, 研究員 (00634891)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ゲノム解析 / 婦人科腫瘍学 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮および卵巣に生じる癌肉腫は、予後不良の希少がんである。申請者らは、癌肉腫にゲノム異常パターンによる4分子型があり、中でもDNAコピー数異常が頻発し、相同組換え修復異常(HRD)を背景に生じるCopy Number High (CNH)サブタイプの予後が最も悪いことを見出した。本研究では、予後不良なCNHサブタイプの中で原因遺伝子が不明となっている症例について全ゲノムシーケンス解析し、その責任遺伝子・領域を同定することを目的とする。HRDはPARP阻害薬の標的になり得ること、また分子型分類により、がんの個性に応じた治療が可能になることから、予後の改善ならびにプレシジョン医療への展開が期待される。 本研究は以下のように進める。(1) CNHサブタイプの中で原因遺伝子が不明である20症例の全ゲノムシーケンス解析を行う。(2) 体細胞および生殖細胞系列変異の解析を行い、責任遺伝子・領域の候補を探索する。(3) これまでの癌肉腫の解析結果、ならびにインハウスおよび公開データベース上の類縁がん種のデータと統合的に解析し、責任遺伝子・領域を同定・実証する。(4) アーカイブ検体152症例をターゲットリシーケンス解析し、特定した変異の再現性を確認する。 平成29年度は、パネルシーケンス解析で同定したCNHサブタイプの症例について、体細胞および生殖細胞系列変異解析データの精査を行った。原因となる遺伝子異常を37症例で同定できたが、27症例は原因遺伝子が不明であった。これらの中から、全ゲノムシーケンスが実施可能な症例を選定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は以下の点で進捗があった。 第1に、タンパク質コーディング領域内の体細胞および生殖細胞系列変異解析データの精査を行い、原因となる遺伝子異常を37症例について同定した。得られた変異候補の絞込みには、がん体細胞変異データベースとして、COSMICや TumorPortal を用いた。生殖細胞系列変異解析では、遺伝子多型データベースとして、内外の大規模データベース(ExAC, 1000 Genomes, ESP6500,ToMMo, HGVD)を利用した。検出した変異が病的なものか判定するために、遺伝子変異と病的意義を関連付けたデータベース(ClinVar, HGMD)を利用した。腫瘍における Loss of Heterozygosity (LOH)も変異検出に利用した。第2に、予後不良であるCNHサブタイプの中で原因遺伝子が不明となっている症例について全ゲノムシーケンス解析を行うため、原因遺伝子が不明な27症例の中から全ゲノムシーケンスが実施可能な症例を選定した。第3に、FFPEの特性に起因するノイズを情報学的に除去するためのプログラムを開発した。ノイズの識別には、mapping quality のほか、 soft-clipped reads や properly-paired reads の情報を利用した。また、体細胞変異データベースTumorPortalを用いた、ノイズ変異のフィルタリングも行った。本プログラムはアーカイブ(ホルマリン固定パラフィン包埋;FFPE)検体による変異の再現性の検討に利用する。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 全ゲノムシーケンス解析:CNHサブタイプの中で原因遺伝子が不明である症例の中から20症例について、遺伝子以外の領域も対象とした全ゲノムシーケンス解析を行う。深度は30~50xとする。タンパク質コーディング領域外の体細胞変異解析/生殖細胞系列変異解析では、構造変異ならびに転写調節部位・非コーディングRNA等の変異が新たに検出される可能性が高く、これらの変異を機能領域ごとに分類しながら解析を進める。 (2) 先行研究の解析結果ならびに類縁疾患の既存のデータを用いた統合解析・実証解析:(1)で得た変異候補から責任遺伝子・領域を同定する目的で、先行研究により得た、癌肉腫 142 症例のパネルシーケンス解析、メチル化解析データならびに家族歴・既往歴等の詳細な臨床情報を含めて統合的に解析する。また、別研究で得られたインハウスの解析データおよび米国の大規模癌ゲノムコホート The Cancer Genome Atlas (TCGA)の解析データを利用し統合的に解析する。 (3) アーカイブ検体による変異の再現性の検討:特定した変異の再現性を癌肉腫検体で確認するため、本研究で取得した変異のパネルを作成し、ターゲットリシーケンス解析を行う。使用検体として、がん研究会で保管している 152 症例分の癌肉腫のアーカイブ検体を用いる。DNA の化学修飾・切断等の、 FFPE の特性に起因するノイズは、厳密な品質管理による検体の厳選および情報解析によるノイズ除去により対処する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:平成29年度のシーケンス解析関連の物品費が少なかったため。 使用計画:本研究計画を遂行するのに必要な全ゲノムシーケンス解析などの物品費として使用する。
|
Research Products
(2 results)