2018 Fiscal Year Research-status Report
フィルン試料のハロカーボン測定を利用した過去50年のメタン同位体変動の高精度復元
Project/Area Number |
17K18342
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
梅澤 拓 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (00570508)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | メタン / フィルン / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に整備した温室効果ガスやハロカーボン類の大気濃度シナリオやフィルン空気拡散モデルの入力パラメータを用いて、観測データのあるフィルンにおける温室効果ガスやハロカーボン類の深度分布の計算を行った。この結果を観測データと比較したところ、大気濃度シナリオの異なる複数の成分で特定の深度においては再現性が良くなかった。このような傾向は、フィルン空気拡散モデルに入力した拡散係数の深度分布の修正によって低減できると考えられるため、モデル計算に用いた拡散係数を複数の成分を制約条件として用いて最適化することで、多種の温室効果ガスとハロカーボン類についてモデル計算の再現性を向上させることができた。一方で、これらのモデル計算の過程においては、入力値として扱う過去のメタン濃度の変動に、既往研究で考えられていた以上に大きな不確実性があることがわかった。 最適化された拡散係数の深度分布を用いて、メタンの炭素と水素の安定同位体比のモデル計算を実施し、フィルン内における分子拡散と重力分離に伴う同位体分別効果を推定した。これらの同位体分別効果を補正することにより、原理的にはフィルンの観測データから過去の時間変動の復元が可能である。しかし、今回の計算結果から復元されたメタンの炭素同位体比の時間変動は南北両半球間で不整合が見られた。この原因は、フィルン内の分子拡散によって起こる同位体分別がメタンの炭素同位体比については非常に大きく、かつ、その大きさがフィルンサイト毎に大きく異なるためと考えられる。したがって、モデル計算に入力する拡散係数およびモデル内での分子拡散の取り扱いが非常に重要であることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で得られたフィルン試料の測定データを活用し、多種の温室効果ガスとハロカーボン類について実際のモデル計算および再現性の向上につながるモデルの改良を実施できた。また、上述のようなフィルン空気拡散モデルの課題が見つかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
フィルン内での分子拡散によるメタンの炭素同位体への同位体分別効果の大きさは、これまでに最適化した分子拡散係数だけでなく、モデル内での深度別の分子拡散の定式化にも非常に大きく依存することがわかった。このような分子拡散の取り扱い法について検討することで、本研究でのメタン同位体比の時間復元における不確実性を評価する必要がある。また、これまでのモデル評価を通して見つかった過去のメタン濃度変動の不確実性についても、入手可能なデータとの比較などを通して再調査を行う必要がある。 また、フィルンデータに基づくメタン濃度と同位体比の復元結果をメタン放出源の時間変動の観点から解釈するため、過去50年間をカバーするボックスモデルを構築する。この計算結果をもとに、過去50年にわたるメタン放出源の変動について考察する。
|
Causes of Carryover |
使用計画に合わせて執行したが、収支状況報告書の通りの残額が発生した。次年度の消耗品購入に使用する。
|