2019 Fiscal Year Research-status Report
フィルン試料のハロカーボン測定を利用した過去50年のメタン同位体変動の高精度復元
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17K18342
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
梅澤 拓 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (00570508)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタン / フィルン / モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに整備した大気中微量気体の濃度シナリオやフィルン空気拡散モデルの入力パラメータを用いて、グリーンランドのフィルンにおける微量気体の深度分布の計算を行った。一般にモデル計算によるフィルン中の深度分布は拡散係数と大気濃度シナリオによって決まる。そこで、過去の濃度変化傾向が異なる6成分(CO2、SF6、CFC-11、CFC-12、CFC-113、CH3CCl3)を利用して、フィルンの拡散係数の深度分布の調整を行った。これらのチューニング6成分については、このような拡散係数の改良によって深度分布の再現性が向上した。一方で、メタン(CH4)については改良された拡散係数を用いてもフィルンの最深部での再現性が向上しなかったため、大気濃度シナリオの最適化を行った。その結果、フィルンでのCH4の深度分布を再現できる大気濃度シナリオは、1960年代から1970年代にかけて既往研究と比べて大きな差異が見られた。さらに、本研究で推定された大気濃度シナリオを利用して既往研究で報告されているグリーンランドの別のフィルンサイトについてもモデル計算を行ったところ、CH4の深度分布については十分な再現性が得られなかった。このように、グリーンランドの2つのフィルンサイト間で大気濃度シナリオに整合性が見られないことは、過去50年間のCH4の濃度変化、特にフィルン最深部の年代に相当する1960年代や1970年代の濃度変化が既往研究の想定以上に不確実であること、また、既往研究と本研究の両方で採用されている複数のチューニング成分を利用した拡散係数の最適化にも不確実性が大きいことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のようにグリーンランドフィルンでのメタン濃度のモデリングにあたっての課題が特定されたが、これらの課題は本研究計画でのメタン同位体比の変動復元の上でも重要な問題となる。したがって、メタン濃度のモデルの改良に重点的に取り組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で明らかになった過去50年間のメタンの大気濃度シナリオの不確実性は、メタンの全球収支の変動推定に著しく影響する大きさであり、精査が必要と言える。今後は本研究と既往研究のフィルンサイト間の詳細な比較を行い、フィルンモデルの再現性を保証可能な大気濃度シナリオの範囲についてより詳細な検討を進める。
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Causes of Carryover |
本研究のモデル計算において重要な課題が見つかったため、より詳細な再計算と成果発表に取り組むため、研究計画の延長を申請した。消耗品購入や成果発表の費用に充てる。
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