2017 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism analysis of chemical mixture effects on the daphnids using gene expression analysis
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17K18344
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
渡部 春奈 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 研究員 (00620395)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 複合影響 / ミジンコ / 重金属 / 多環芳香族炭化水素 / 等効果線図 / 相乗作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミジンコの繁殖影響に対し相乗作用が誘導される化学物質の組み合わせ条件を抽出し、そのときの遺伝子発現情報を得るため、まず既存文献のレビューによりミジンコに対し相乗作用が報告されている化学物質の組み合わせを探索した。 金属類同士の組み合わせについて、カドミウムに対し銅と亜鉛をそれぞれ混合してニセネコゼミジンコ繁殖試験を実施し、等効果線図を作成したところ、カドミウムと亜鉛は相殺作用を示したが、カドミウムと銅は相乗作用を示した。しかし、金属類の場合、生物リガンドとの結合の競合による見かけ上の相乗作用であり、生物取込量でみると複合影響が説明できる可能性がある。 次に、多環芳香族炭化水素(PAHs)のフェナントレンと、金属類(銅、カドミウム、ニッケル)の組み合わせによる相乗作用が報告されていることから、同じPAHsのピレンと銅の組み合わせによるミジンコ繁殖試験を実施した。等効果線図を作成するための予備試験として、2物質のTU=各濃度/EC50(50%影響濃度)の和が1になるように、TU換算で、3/4:1/4、1/2:1/2、1/4:3/4と異なる濃度比で2物質を混合し、各単独物質と同時に試験した。2物質が相乗作用を示す場合は阻害率50%以上を示すことが期待されたが、阻害率は50%前後であり、同時に実施した単独試験で得られたEC50を用いて補正した結果、やや相殺よりの結果であることが分かった。次の候補としてPAHsの代謝にCYP酵素が関与していることから、CYPを阻害するとされる、ピペニルブトキシド(PBO)を組み合わせて同様に予備試験を行ったが、明確な相乗作用は示されなかった。単独試験時と比べて、各物質のEC50が大きく異なり、組み合わせの条件の想定から外れてしまったことも原因の1つとして考えられ、毒性値の再現性の確保が今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既存文献に基づき、作用機序から相乗作用が懸念される2種の化学物質を組み合わせてミジンコ繁殖試験を実施したが、候補としていた多環芳香族炭化水素と金属類の組み合わせによって明確な相乗作用が示されなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
毒性作用機序から相乗作用を示すと考えられる組み合わせの探索を継続するが、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析と、機能未知の遺伝子を含めた発現遺伝子によるパスウェイ構築などのバイオインフォマティクス手法の検討を進める。試験化学物質群として、これまでの実験により、ミジンコ繁殖影響に対し相乗作用を示した組み合わせ(銅とカドミウム、ピレスロイド系農薬と共力剤のPBO)を用いる。 次世代シーケンサーを用いた実験については、Beckman Coulterの自動分注装置等も活用しながら迅速に進める。バイオインフォマティクス解析については、専門家であるLiverpool大のPhillipp Antczak博士と相談しながら適切な解析を行う。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンサー用のキットが高額であるが、その実験の実施を次年度に繰り越したため。また、予定していたマイクロアレイデータ解析用ソフトウェアGeneSpring GX(65万円)の購入を取りやめ、無料の解析ソフトウェアや他の研究室が所有している解析ソフトウェアを活用することにしたため。
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