2017 Fiscal Year Research-status Report
酵素触媒フラグメント合成を用いた高強度バイオポリアミドの開発
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17K18361
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
土屋 康佑 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (40451984)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポリペプチド / 化学酵素重合 / テレケリック / ナイロン |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な社会実現への要請から、従来石油から合成されていたポリアミド材料のうちいくつかの用途では代替となるバイオマス資源由来のバイオポリアミドが合成されている。本申請課題では、現在達成されていない100%バイオマス由来の高強度および高耐熱性バイオポリアミド材料を創製することを目的とし、本年度はバイオポリアミドの基本骨格としてプロテアーゼを用いた化学酵素重合法により様々なポリペプチドフラグメントの合成を行った。機能性ペプチドフラグメントとして高強度を付与することが可能なテレケリック型ポリアラニンを化学酵素重合法により重合した。得られたテレケリック型ポリアラニンは同じポリアラニンモチーフを持つ天然の構造タンパク質と同様の逆平行ベータシート構造を形成することが分かった。天然タンパク質であるカイコおよびクモ由来シルクフィルムに対して合成したテレケリック型ポリアラニンを添加剤として用いたコンポジットフィルムを作製した結果、シルクフィルムの高強度化および高タフネス化に成功した。構造解析の結果から、テレケリック型ポリアラニンがフィルム中で効果的にベータシート結晶を形成していることが明らかとなっており、特殊構造を有するポリペプチドフラグメントが材料の力学特性の付与に効果的であることが示唆された。また、バイオ由来ナイロンユニットや芳香族ユニットを非天然アミノ酸残基として有するトリペプチドモノマーを合成した。これらの非天然アミノ酸は酵素による認識能が低いため単独重合およびアミノ酸と共重合によるポリマー化は困難であったが、合成したトリペプチドを用いて化学酵素重合を行うことで、周期的に非天然アミノ酸ユニットを導入したポリペプチドフラグメントを合成可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、酵素を用いた化学酵素合成によって様々な一次構造を有するポリペプチドフラグメントの合成に注力し、テレケリック構造や非天然アミノ酸などの特殊構造を有するポリペプチドフラグメントの合成に成功している。また、これらのフラグメントの高分子量化に先立ち、特異的な自己組織化能を持つテレケリック型ポリペプチドフラグメントが高い力学的特性を付与することを明らかにしており、この成果について論文を発表した。さらに、トリペプチドをモノマーとした化学酵素重合によって周期的配列を持つポリペプチドフラグメントを合成する手法を開発した。この手法により多様な非天然アミノ酸ユニットを導入することが可能となり、ナイロンユニットや芳香族アミノ酸ユニットを導入したポリペプチドを効率よく合成することができた。以上の成果から、最終目標である高強度ポリアミドの合成に向けて順調に研究が進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに材料の力学特性を決定づける鍵となるポリペプチドフラグメントを化学酵素合成法によって合成した。次の段階に予定している後重合によるフラグメントの高分子量化について、天然構造タンパク質であるエラスチンの部分的な周期配列を模倣したポリペプチドフラグメントの高分子量化に成功し、成果について論文を発表している。この予備的な知見をもとに、今後は合成したポリペプチドフラグメントの後重合によるポリアミド合成について、高分子量を達成可能な重合条件の模索やフラグメントの一次構造の最適化を行い、目的とする100%バイオマス由来による高強度および高耐熱ポリアミドの創製を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度には酵素を用いた化学酵素重合によるポリペプチドフラグメント合成に使用する物品に助成金を充てる予定であったが、所属研究室において以前から化学酵素重合に関する研究を行っており、当該年度に使用する機器および消耗品は既存のもので対応可能であった。そこで次年度に予定しているポリアミド合成とその物性評価に関する研究に必要となる機器の購入へ助成金を充てる予定である。
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Research Products
(11 results)