2017 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子転写活性とゲノム三次元構造の経時的同時計測による発現制御機構の解明
Project/Area Number |
17K18363
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
有吉 哲郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 特別研究員 (00782103)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蛍光イメージング / mRNA / アプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、まず独自に開発した蛍光RNA"Romanesco"を用いて特定遺伝子の転写ダイナミクスをイメージングすることを目指した。ゲノム編集技術CRISPR/Cas9システムにより種々の細胞においてRomanesco配列のノックインを試みたところ、マウスES細胞、ヒトHEK293細胞、ヒト乳がん細胞MCF7においてRomanesco配列をゲノム上の狙った遺伝子に挿入することに成功した。このうちMCF7細胞については、複数の遺伝子について外部から細胞を刺激することで蛍光強度が大きく変化する様子が観察された。この結果は、刺激依存的な遺伝子転写活性動態のライブセルイメージングという当初の目標が見事達成されたことを示している。 一方で、遺伝子の発現量によっては一般的な顕微鏡では十分な感度を持ったイメージングができないことが分かってきた。そこで次に、顕微鏡法の改良によりRomanescoに由来する蛍光を高い感度で検出することを目指した。Romanescoは細胞の自家蛍光などに比べ長い蛍光寿命を持つことに着目し、パルスレーザーを用いた蛍光寿命イメージングを行ったところ、転写活性イメージングにおけるシグナル-バックグラウンド比が大幅に向上するという大きな改善が達成された。これらの研究成果により、ゲノムへのRomanescoのノックインと蛍光寿命イメージングを組み合わせることにより多くの遺伝子について生細胞での転写活性イメージングが可能になる見込みが示された。 本年度の研究成果は現在国際的科学雑誌への投稿へ向けて準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画ではゲノム上へのRomanescoのノックインによる転写活性イメージングの達成を目標としていた。本年度の研究成果ではこの目標を達成できた上、蛍光寿命イメージングの採用によりイメージングの感度が大幅に向上するという来年度以降の研究に向けて大きなプラスとなる思わぬ成果が得られている。このことから、本年度における当研究計画の遂行は予定以上に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では当初の研究計画に従って研究を遂行する。具体的には、本年度開発に成功した遺伝子転写活性イメージングとゲノムDNAイメージング技術を組み合わせ、ゲノム三次元構造の変化と遺伝子転写活性の経時的同時計測を達成する。本年度の研究成果から多くの遺伝子について転写活性イメージングが可能になる見込みがあること、及び所属研究室においてゲノムイメージング法の開発が進展していることから、当初の研究計画が順調に遂行可能であると期待している。
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