2017 Fiscal Year Research-status Report
ω3脂肪酸の機能性発現に関わる代謝経路についての網羅的解析
Project/Area Number |
17K18364
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石原 知明 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (90724013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ω3脂肪酸 / エイコサペンタエン酸 / 機能性代謝物 / シトクロムP450 / 17,18-EpETE |
Outline of Annual Research Achievements |
エイコサペンタエン酸(EPA)などのω3脂肪酸は、酵素的に機能性代謝物に変換され、抗炎症効果を発揮する。申請者らはこれまでに、ω3位のエポキシ化代謝がこの機能性発現に重要であることを明らかにしてきたが、その生体内における産生経路はわかっていなかった。そこで本研究では、脂肪酸代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)ファミリーに着目し、この代謝経路に関わる分子種を同定するとともに、その遺伝子欠損マウスを解析することで、その生理的意義を明らかにすることを目的とした。本年度は下記に示す成果を得た。 EPA由来の機能性代謝物であるエポキシ化EPA(17,18-EpETE)の産生経路を明らかにするために、マウス(全102種類)およびヒト(全57種類)のCYP遺伝子ライブラリーを完成した。さらに、このCYP遺伝子ライブラリーを培養細胞に過剰発現し、EPA処理後の培養液に含まれる代謝物のメタボローム解析を行い、EPAから17,18-EpETEを産生するCYP分子種を包括的に同定した。現在、同定したCYP遺伝子の欠損マウスの導入・作製を進めている。また、導入が完了したCYP遺伝子欠損マウスについて生体内での機能解析を行ったところ、野生型マウスに比べ、臓器内での17,18-EpETE産生の減少が認められた。さらに興味深いことに、このCYP欠損マウスでは時間の経過とともに、皮膚組織において局所的な異常所見(表皮肥厚・炎症性細胞浸潤)や、所属リンパ節の肥大が認められた。このことから、生体内においてこのCYPがω3脂肪酸の代謝に寄与しており、そこから生成する機能性代謝物が組織恒常性の維持に関与していることが示唆された。今後、このCYP欠損マウスで認められる表現型とω3脂肪酸代謝系との関係を分子レベルで明らかにしていくとともに、導入・作製中のCYP欠損マウスについても解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、CYP遺伝子ライブラリーの作製と、EPAから17,18-EpETEを産生するCYPの網羅的同定を完了することができた。同定したCYP遺伝子の欠損マウスの作製・導入についても、順調に進めることができている。準備が整い次第、機能解析に進みたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在解析中のCYP欠損マウスに関しては、皮膚組織やリンパ節異常の表現型とω3脂肪酸代謝系との関係を分子レベルで明らかにしていきたい。まずは、このCYPの特異的抗体を作製し、組織免疫染色フローサイトメトリーにより発現細胞の特定を行う予定である。すでに候補となる抗体が数種類得られているので、現在バリデーションを進めている。発現細胞を同定したのちに、Cre/loxPシステムによるコンディショナル欠損マウスの作製を行う(既にfloxマウスの準備は完了している)。コンディショナル欠損マウスを用いた解析を行うことにより、この表現系において重要な役割を果たしている細胞を明らかにし、生体恒常性維持における17,18-EpETEの役割を詳細に検討したいと考えている。 一方、現在導入・作成中のCYP遺伝子欠損マウスについても上記と同様に、まず生体内でEPAのエポキシ化(17,18-EpETE産生)を触媒するか否かを調べ、野生型マウスとの差が認められた臓器について、定常状態や病態モデルでの表現系解析を行いたいと考えている。
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