2017 Fiscal Year Research-status Report
古代東アジアの祭祀文化の伝播・受容から見た神祇令の法文化史的研究
Project/Area Number |
17K18384
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Research Institution | The Institute of Moralogy |
Principal Investigator |
久禮 旦雄 公益財団法人モラロジー研究所研究センター, 道徳科学研究センター, 研究員 (50726990)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法制史 / 神祇祭祀 / 法社会史 / 律令法 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる今年度は、研究の対象とする祭祀関係史料の検討を中心に行った。本研究は、古代の東アジア世界における文化受容史の観点から、日本の神祇令及び律令制祭祀の位置づけを試みるものである。しかし、その分析の対象となる、現存している祭祀関係史料は、古代に書かれたものがそのまま残っていることは少なく、中世・近世に書写されたものがほとんどである。そして、その場合、書写の過程において錯誤や、時としてその時代状況による加筆・修正などが行われている可能性もある。 そのため、今年度は現代の皇室祭祀の直接の淵源となる近世の皇室・朝廷に関する研究・史料の収集・整理を行い、その成果の一部である「光格天皇・仁孝天皇研究論文目録(稿)」及び「享和元年の光格天皇宸筆「勅題・勅点」資料」(皇室関係資料文庫として、所功と共著)を発表した。 また、従来から研究を進めていた皇室・朝廷を中心とした元号(改元)制度とそれに伴う儀礼について、歴博国際シンポジウム『年号と東アジアの思想と文化』において「平安時代初期の王権と改元」として研究発表を行い、その成果も含めて所功・吉野健一との共著『元号 年号から読み解く日本史』(文藝春秋社)としてまとめ、刊行した。 これらの研究により、特に近世における古典復興の動きの中での、古代史関係史料の研究や祭祀復興の動きについて全体像を把握することが可能となり、それらの成果を前提として、古代の法制度や祭祀について理解することが可能となった。 このほか、古代の神社祭祀についても並行して研究を進めており、その成果の一部として、古代王権と神社祭祀の関係について稲荷社を中心に考察した「淳和天皇朝の稲荷神社」を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度冒頭において、研究データを保管していたUSBメモリーが破損し、その復旧に時間と研究費が必要となったため、当初の計画に修正が必要となった。そのため、現地調査・史料収集は来年度に行うこととし、古代史研究の対象となる史料分析の前提として、近世史の研究・史料の収集・整理を行った。 並行して、7・8世紀の東アジア世界における律令国家形成期の祭祀と神話についての研究、9世紀の神社と王権の関係について研究を行った。その成果は既に寄稿・投稿を進めており、順次発刊の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策に変更はない。東アジアからの外来の祭祀文化の受容主体となった古代王権の祭祀に対する姿勢については、寄稿・投稿済みで今後刊行予定の論文において研究を進めている。 そのため、今後は王権から、あるいは王権を介さず独自に外来の祭祀文化を受容していった諸地域の祭祀について、現地の調査や資料収集も進め、研究を進めていく。 最終的には王権と地域の相互関係の中から、列島社会の祭祀における外来文化の受容について、研究をまとめることを予定している。
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