2018 Fiscal Year Research-status Report
生育音響環境がマウスの音声コミュニケーションに与える影響
Project/Area Number |
17K18398
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
松本 結 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 流動研究員 (90789942)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マウス / 音響環境 / 行動 / 内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は環境中の様々な刺激を知覚・認知し、環境に適した行動を選択する。本研究では、環境、特に音響環境がマウスの行動に与える影響を検討し、複雑に絡まりあう環境刺激と動物の行動との関係を解明することを目的とする。 二年目である本年度は、昨年度に構築した音声呈示システムを用いて、音響環境が行動に与える影響をより詳細に検討した。異なる音響環境下(熱帯雨林再生音、熱帯雨林逆再生音、ホワイトノイズ、音なし)で5つの行動テスト(高架式十字迷路テスト、オープンフィールドテスト、スリーチャンバー(社会行動)テスト、強制水泳テスト、尾懸垂テスト)を実施したところ、マウスの行動は音響環境に応じて異なることが明らかとなった。昨年度の結果と同様に、様々な音を含む熱帯雨林再生音環境下では他のホワイトノイズや音なし環境下よりも探索行動が増加する傾向が見られた。興味深いことに、熱帯雨林逆再生音環境下では最も長く探索行動が観察された。また、強制水泳試験における水中の探索行動でも類似した結果が観察された。これらの結果は、動物が環境中の音響特徴に応じて探索行動を変化させている可能性を示している。また、様々な音を含む音響環境下では、スリーチャンバーテストにおける他個体との接触時間が長いことが明らかとなった。このことは、音響環境が動物の社会行動にも影響を与えていることを示唆する。上記の行動実験に加え、音響環境が血中のホルモン濃度に与える影響を検討するため、ホルモン測定を行った。その結果、豊かな音響環境はマウスのコルチコステロン濃度を変化させることが明らかとなった。これらの結果は、音響環境がマウスの行動や内分泌に影響を与えることを示しており、環境エンリッチメント研究などにおいて音響環境を考慮することの重要性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は昨年度の結果をもとに、より詳細な音響環境の影響を検討した。本研究では前年度よりも多くの種類の音響環境の効果を検討しており、その結果、音響環境の種類に応じて行動が変化すという結果が得られた。この結果は、「どのような刺激」が「どのような効果」をもたらすのか、という研究目的を達成するために重要な成果となりうるだろう。当初の予想とは異なる結果のため、計画に変更点はあるものの、本年度の研究で得られた成果は音響環境の影響を理解するうえで重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では長期実験を予定していたが、短期実験における内分泌、行動への影響を観察することができたため、短期的な音響環境変化が内分泌、行動に与える影響を明確にしていく予定である。特に環境中のどのような音響情報が内分泌や行動に影響を与えるのかを明らかにすることができれば、今後の音響環境研究における重要な基礎となるはずである。本成果は、音響環境が動物の状態や行動を変化させるメカニズムの理解に大きく貢献するだろう。
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Causes of Carryover |
赤外線サーモグラフィカメラの購入にあたって、当初の予定よりも安く購入することができたため、次年度使用額が生じた。次年度はホルモン測定の追加実験が必要となっており、次年度使用額はこの実験に使用する測定キット等の購入に充てる。
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Research Products
(5 results)