2017 Fiscal Year Research-status Report
シリコーンゴムの動的歪み制御による微細積層印刷エレクトロニクスの創出
Project/Area Number |
17K18410
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日下 靖之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (00738057)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 印刷 / 寸法忠実性 / 層間接続 / 接触力学 / ずり |
Outline of Annual Research Achievements |
微細印刷エレクトロニクスの実現を目指し反転オフセット印刷におけるパターン忠実性に関する研究を行った。その結果、PDMSの応力変形がインク界面にずりを生じさせ、スクレイピングまたはスライディングの2種のモードでパターン寸法安定性が悪化することがわかった。摩擦力を考慮した接触力学モデルにより実験結果を良好に説明できた。特にパターンが隣接しているとPDMSの変形も複雑化し、寸法インテグリティも同時に変化する。すなわち、パターン間で相互に影響しあうことが実験・モデルの両方から明らかになった。これは、PDMSが非圧縮性であるために、凸版凸部がPDMSを押し当てられると横方向に膨らもうとして隣接したパターンのインク界面にずりを生じさせることが原因となっている。この現象は、PDMSを用いた印刷法全般で起こりえる問題であり、これを印刷エレクトロニクスにおける歪近接効果と呼ぶことにした。以上の知見をもとに寸法安定性を確保するためのプロセス最適化を行うことができる。 印刷によるコンフォーマルビアを形成する手法開発にも成功した。コンタクトホールへのインク追従性を系統的に評価したところ、4種類の欠陥モードが明らかになり、いずれもPDMSの接触変形から定量的に予測することができた。また印刷時の接触変形を直接観察することにより、動的な変形挙動を明らかにした。また印刷速度を上昇させるとホール表面へのPDMS追従性が悪化することを知見した。これはPDMSによってホール内に閉じ込められた空気層を消失させるために必要な時間に関係していることが示唆された。数値モデルをもとにプロセスを最適化することで、ホール径10um、深さ2.5umの1300点連結コンタクトチェーンを試作し、良好に導通させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
印刷エレクトロニクスにおける寸法安定性の補償と層間接続技術の確立をテーマに、PDMSの接触変形を出発点として、PDMSの(1)XY方向の変形(ずり)が寸法安定性に影響することが明らかになり、また(2)Z方向の変形を活用することで微小コンタクトビアの印刷形成を実証することができた。ゴム変形の数値モデル化にも成功し、定量的な予測も可能になった。このように、当初の研究計画の通り研究が進展している。さらに本知見に基づき、ロール2シート印刷においては周速差によるずり変形がやはり寸法精度を悪化させることがわかった。これは当初予期していないことではあったが、寸法変化量をニップ幅、印圧、PDMS構成、周速差の4つのパラメータで定量的に説明することに成功し、プロセスルール基盤を拡充することができた。また、表面追従性の直接観察の結果、PDMSの高速印刷における欠陥発生要因を発見するなど、新たな展開もあり、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の通り、溶媒リフローによる全印刷層間接続技術を実証することを目指す。これまでの知見から、刷版の補正を行うことなく寸法精度を担保可能なプロセスルールが明らかになったので、PDMSパターンの局所変形補正技術については、優先度を下げる。
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Causes of Carryover |
原理検証用の直接観察用高精度印刷機の試作にかかる費用について、他予算での手当てが可能になったため、本年度の使用予算を圧縮することができた。また当初参加予定としていた学会が招待講演となったため参加費を圧縮することができた。そこで次年度のリフロー層間接続パターンに用いる刷版試作費に補填することで研究を推進することにした。
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