2017 Fiscal Year Research-status Report
測定値間の相関に着目した効率的な試験所間比較の設計
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17K18411
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
城野 克広 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60509800)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 試験所間比較 / 測定の不確かさ / 技能試験 / 適合性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、測定値間の相関に着目し、試験所間比較を効率的に実施する方法を与えることにある。試験所(測定者)の測定能力の確認のために、同一のものを複数試験所で測定し、その結果を評価する試験所比較がよく行われる。その実施には数年を要すものもある。一方で、期間の短縮のために、全試験所をサブグループに分け、サブグループごとに異なるものを測定することも行われている。本研究では、サブグループごとの結果が相関関係をもつように試験所間比較を設計し、全ての測定値を互いに精度よく関連づけることを目指す。本研究の完成は、試験所間比較のコストを抑えるのみならず、参加試験所が測定品質の改善サイクルを適切な時間間隔で運用するために役立つものとなる。 平成29年度においては、サブグループを結びつけるリンク試験所の測定について、その測定の不確かさと2つ(以上の)測定の間の相関の妥当性を確認する手法について論文投稿した。また、これらを用いて非リンク試験所の測定値を精度よく関連づける方法について研究した。すべての測定値は試験所間比較のための参照値(あるいは付与値とも呼ぶ)を介して関連づけられる。本年度の研究では、この参照値の持つ性質について詳細に検討した。本研究では、全ての試験所からの報告値に対して統計モデルを当てはめ、その統計モデルに基づいて回帰分析を行うことで、参照値を導いた。この参照値について以下2点を明らかにした。 (a) 近いアプローチの従来研究では、リンク試験所の測定値対する統計モデルがサブグループごとに一貫性を持たない解析が行われ、特に測定値間の相関が弱いときに現実的でないかたよりが生じうる。 (b) 本研究のアプローチではそのようなかたよりが生じず公平な比較ができる可能性が高い。 この成果は国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では平成29年度は、 (1) リンク試験所の測定について、その測定の不確かさと2つ(以上の)測定の間の相関を推定する手法の開発 (2) 推定結果を用いた測定能力の評価のための統計指標の選択 の2点について研究を進める予定であった。 (1)について、推定の精度が低く得られたデータから推定を行うことは危険であることが分かった。この推定の代わりに、リンク試験所が報告した技術情報に基づいて算出した相関の妥当性を統計的検定によりサポート手法についてよく検討し、論文投稿した。予定とはアプローチはやや異なっているものの、本質的な目的は同じであり、おおむね順調に進展していると言える (2)については問題なく研究を進め「研究実績の概要」に示した成果を残した。さらに参照値を用いた各試験所の測定能力の評価のための統計指標の選択については平成29年度に国際会議で発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定の通り、平成29年度に行った研究の成果を発表することに力を注ぐ一方で、どのような拡張が可能かを考え、その結果を試験所間比較の設計手法としてまとめる。1つの試験所が多くのサブグループに参加したいということや、逆にある特定の試験所が多くのサブグループに参加することで、結果にバイアスが生じるのを、他の試験所が懸念することがありうる。提案手法を拡張し、どのような条件でその拡張された手法が適用可能かを明確にする。サブグループ間の関連付けを精度よく行えるかどうかが重要である。このため、どの計画が精度がよいかという定量的な検討を通じて、適用可能性を議論する。
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Causes of Carryover |
平成29年度の予定額では不足したために、前倒し支払請求を行った。残額は次年度に使用することを予定したものである。
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