2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病発症時の膵β細胞に発現するグルタミン酸受容体活性化シグナルの解明
Project/Area Number |
17K18416
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
室冨 和俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40635281)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グルタミン酸受容体 / インスリン / β細胞 / リン酸化 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、インスリン分泌に関与するグルタミン酸受容体活性化機構を明らかにし、糖尿病治療標的としての当該シグナル伝達経路の可能性について検討する。平成29年度は、インスリン分泌に関与するグルタミン酸受容体サブユニットの解明およびその受容体サブユニット活性に影響を及ぼすリン酸化タンパク質の関与について検証した。 インスリンを分泌する膵β細胞株MIN6に発現するグルタミン酸受容体NMDA受容体サブユニットをPCRで確認した結果、NR1およびNR2Dサブユニットは強く発現しており、NR2BおよびNR2Cサブユニットは低発現であった。そこで、NMDA受容体サブユニット特異的遮断薬を用い、糖尿病を模倣した高グルコース負荷時のインスリン分泌に影響を及ぼすサブユニットを検討した。その結果、NR2B遮断薬Ro 25-6981添加時に培養液中のインスリン濃度が約10倍上昇し、そのインスリン分泌量の増加は、脱リン酸化阻害カクテルの添加によって約半分にまで抑制された。さらに、カルシウム指示薬Fluo-4によるカルシウムイメージを行った結果、Ro 25-6981添加によって細胞内カルシウムイオン濃度が上昇する傾向を示した。以上の結果、NMDA受容体NR2Bサブユニットを介してインスリン分泌が亢進することが明らかとなり、その分泌過程にタンパク質リン酸化が関与する可能性が示唆された。 細胞内カルシウムイオン濃度は、インスリン分泌過程で上昇することが知られているが、神経細胞ではNMDA受容体遮断によってカルシウムイオン濃度は減少する。従って、膵β細胞と神経細胞とではNMDA受容体機能が異なる可能性があり、今後検証したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞の入手に時間を要した点および想定していた実験での解析が不可能であったため、計画当初よりもやや遅れている。当初、免疫沈降法を使ってグルタミン酸受容体のリン酸化を検出する予定であったが、膵β細胞株中に発現するNR2Bタンパク質量が、マウス大脳皮質と比較して著しく低く(約5000分の1)、免疫沈降では検出できなかった。今後、リン酸化タンパク質濃縮キットやphos-tag等を用いてリン酸化とNMDA受容体を介したインスリン分泌メカニズムについて検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
NMDA受容体のリン酸化については、上述したように免疫沈降での検出が困難であったため、リン酸化タンパク質濃縮キットやphos-tag等を用いて検討する。さらに、NR2B遮断薬が糖尿病治療薬として有効である可能性を明らかにするために、糖尿病モデルマウスへの投与を試みる。
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Causes of Carryover |
平成29年度に、細胞障害(酸化ストレス)に及ぼすグルタミン酸受容体の影響する予定であったが、酸化ストレス計測に必要な分析機器(LC-MS/MS)が故障し修理に時間を要した。そのため、計画を変更し次年度に測定することにしたため、H29年度は未使用額が生じた。
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