2017 Fiscal Year Research-status Report
磁気軸受と電磁ブレーキを用いた高角運動量・高トルク小型リアクションホイールの開発
Project/Area Number |
17K18428
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
茂渡 修平 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (60769537)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁気軸受 / リアクションホイール / 小型化 |
Outline of Annual Research Achievements |
小型衛星向けのリアクションホイール(RW)は、小型・軽量化に伴って慣性モーメントを失い、角運動量が低下してしまう。本研究は、RWの軸受を磁気軸受とし、回転速度を向上させることによって、RWを30mm程度まで小型化しながら角運動量を高めることを目的とする。まず、ボールベアリングを用いた従来型のRWと制御回路について、小型化を行い、その評価を実施した。小型化に当たり、配線を最小限化する工夫と同時に、民生のSoCを用いて電子回路の高集積化、及び、構造材と電子回路の一体化設計を行い、配線の簡略化、構造の簡素化を行った。結果、従来と同じ構造のRWでも、世界最小サイズの31mm立方で姿勢制御モジュール(RW、センサ、計算機を含む)を実現した。その内容について一件の国内学会発表を行い、最優秀若手奨励賞を受賞した。 次に、RWの磁気軸受化・小型化について、直径50mm/1軸のホイールを設計・検討した。このサイズは選定した部品の制約による。回転体の慣性モーメントは、回転中心からの距離の自乗に比例し、慣性質量に比例する。大きさと重量の制約がある中で慣性モーメントを高めるため、ホイールを中空のドーナツ型とした。浮上用コイルはホイール中心部に配置されるが、外周部に配置された場合よりも小型・高密度化が必要となる。この時問題になるのはコイルの発熱とコアの磁気飽和であるが、宇宙空間は無重量のためホイールの浮上に理想的には定常電流は流れない。そこで、地上での実験時には長時間電流を流さない前提で、瞬間的に制御に必要な最大電流でコアが磁気飽和しない範囲でコアを設計することで小型化した。回転以外の5自由度を制御できるよう、軸保持用のコイルを4個ずつ合計8個、ホイール上下に面対称に配置し、その最適なサイズと配置を磁場シミュレーションにより設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RWの磁気軸受化・小型化について、1軸のホイールを設計・検討した。RWとしての性能を高めるため、ホイール部をドーナツ型とし、中心部にコイルを設置することで重量当たりの慣性モーメントを大きくしている。この時、浮上用コイルがホイール中心部に位置し、小型・高密度化が必要となる。磁気回路の小型化と最適な磁石の配置をシミュレーションにより検討し、実験装置を設計・製作した。ダイナミクスシミュレーションにより、浮上と回転を模擬し、30,0000rpm以下では妥当な電流密度の範囲内で制御可能であることを示した。一方で、回転速度を高めていくと、あるとことで制御が発散してしまう。これは、現在の制御系はジャイロ効果を考慮していないこと、また十分な制御力が出ていないことなどが考えられる。 現在、2017年度設計した1軸磁気軸受RWについて、シミュレーション内容の妥当性の検証のため、実験装置を作成し、浮上実験を行っている。電気回路の実装や制御コントローラへのプログラムの実装等、実作業を行っている。 また、30mmに小型化するためには全体の簡略化と、磁場回路の設計の根本的な見直しが必要である。これまでの検討では、基本的にすべての自由度を能動的に制御する方針でコイル・コアを設計していた。しかしながら、コアの磁気飽和を避け、また少ない電力で十分な安定性を得るには、一部に永久磁石を用いて受動的に制御することが有効であると考えられる。制御回路についても、コイルの数を8個としたことでインバータの数が増え、小さな回路に搭載するには規模が大きくなり、駆動回路設計が複雑化したが、一部自由度を受動的に安定化することで制御に必要なコイルの数も減らせると考えられ、この観点からも有利となる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討では、基本的にすべての自由度を能動的に制御する方針でコイル・コアを設計していた。しかしながら、コアの磁気飽和を避け、また少ない電力で十分な安定性を得るには、一部に永久磁石を用いて受動的に制御することが有効であると考えられる。 制御回路についても、コイルの数を8個としたことでインバータの数が増え、小さな回路に搭載するには規模が大きくなり、駆動回路設計が複雑化したが、一部自由度を受動的に安定化することで制御に必要なコイルの数も減らせると考えられ、この観点からも有利となる。 従って、次のステップとしては、1.一部自由度に永久磁石を用いて受動的に制御し、電力を減らして発熱を減らしながら、さらに小型の磁気軸受を設計する。現在の構造に永久磁石を付加する形で、形状を保ちながら電流を減らすことで、電力密度を低減させること、コアの磁気飽和を避けることが実現できると考えられる。2.制御系を再設計し、100,000rpm程度の高速回転が可能であることを示し、RWとしての性能を評価する。これまでに設計している小型の制御回路と組み合わせ、従来のRWより小型・軽量で大きな角運動量を持つことを実験により確認する。
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Causes of Carryover |
2017年度分は計画通り実験装置の製作等に使用し、見積もりの誤差から少額の残額が発生した。残額は翌年度分と合わせ、新たな実験装置の設計と、その製造、消耗品の購入等に使用する予定である。
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