2017 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム情報を活用したOutbreak関連大腸菌の下痢原性の解明
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17K18439
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
原田 哲也 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (70516723)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Outbreak関連大腸菌 / 細胞付着性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Outbreak関連大腸菌O166:H15、O128:H12、O146:H28を用いて、乳のみマウス試験による下痢原性の検討を行った。また、O166:H15については、HeLa細胞とHep-2細胞を用いた付着性試験を実施し、さらに、Outbreak患者由来株、散発下痢症患者由来株、健康保菌者由来株の全ゲノム解析を行った。 Escherichia coli O166:H15は、4件のOutbreakの患者に由来する4株、散発事例患者由来の2株、健康保菌者由来の2株を供試した。また、E. coli O128:H12とE. coli O146:H28は、各1事例に由来する別患者由来の2株をそれぞれ供試した。乳のみマウス試験では、トリソイ寒天平板に発育した供試株を、1.3×1010から2.8×1010 CFU/mlでPBS(-)に懸濁し、超音波処理後、遠心ろ過処理した上清100μlを乳のみマウスに投与した。また、トリソイブロスによる振とう培養(150rpm、37℃、18時間)上清も試料とした。投与後、4-5時間後に腸管内液体貯留値(FA値)を確認し、非病原株と比較した。結果として、供試したすべてのOutbreak関連大腸菌で有意差は認められなかった。 HeLa細胞とHep-2細胞を用いた付着性試験では、供試したE. coli O166:H15株でびまん性の付着が確認された。また、O166:H15の全ゲノム解析では、供試した8株のうち6株がST349で、Outbreak患者由来の4株のうち3株がST349であった。また、すべての株について病原因子を検索したところ、細胞付着性に関与する病原因子およびastAがOutbreak患者由来の3株のみで確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はOutbreak関連大腸菌の下痢原性を評価するためのアッセイ法の確立を目標として、研究を進めた。乳のみマウス試験によるO166:H15、O128:H12、O146:H28の下痢原性の検討では、様々な手法を検討することで、安定したデータを得るための手技を確立することができた。その結果、供試株では腸管内液体貯留活性が認められなかったため、毒素タンパク等による下痢原性の可能性は低いと判断した。 一方、O166:H15によるHeLa細胞とHep-2細胞を用いた付着性試験では、びまん性の付着が確認され、さらに、全ゲノム解析によりOutbreak患者由来株のみに存在する付着因子の存在が明らかとなった。 今後は供試株の付着性を指標として研究を進めていく予定であり、ほぼ予定通りに研究計画は進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はO166:H15の細胞付着性に着目し研究を進める。Caco-2細胞を用いて付着性の精査を行い、さらに、経上皮電気抵抗値(TER)の測定による物質透過性変化のモニタリングを実施する。また、必要に応じ病原因子欠損株を作出し、細胞付着性や物質透過性を野生株と比較する。 次に、Outbreakの患者に由来するO166:H15のastAについて、その周辺を含めた塩基配列を精査し、食品由来株や保菌者由来株と比較を行う。 研究の進捗状況により可能であれば、2017年に新たに発生したO166:H15によるOutbreakの患者由来株およびO128:H12、O146:H28についても全ゲノム解析を実施し、病原因子の検出を行う。
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Causes of Carryover |
今年度実施したO166:H15株の全ゲノム解析については、本研究と関連のない別業務でのデータを利用することが可能であったため、本研究の経費として計上していない。また、本研究で実施予定の細胞接種試験に使用する陽性および陰性対象に関する論文を現在投稿中である。現在、未受理の段階であるため現時点では掲載料等の費用が計上されていないが、次年度以降にこれらを支出する予定である。 次年度には、2017年に新たに発生したOutbreakの患者由来O166:H15株、およびO128:H12、O146:H28の全ゲノム解析を実施予定である。さらに、研究の進捗により供試株の環状ゲノムデータが必要となる場合も想定されることから、繰り越し分を含め研究費を計画的に使用する予定である。
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