2017 Fiscal Year Research-status Report
電気構造複合破壊のミッシングリンク-破壊エネルギー評価による電気トリー進展制御
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17K18441
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
木谷 亮太 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 研究員 (90761619)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 固体絶縁材料 / クラック / 電気トリー / 積層造形 / 界面 / X線CT / 沿面放電 / 応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気絶縁材料において、機械的破壊と電気的破壊の関係を明らかにすることは、現実の使用環境下での絶縁性能の向上に不可欠である。本研究では絶縁材料の構造と電気的性質の関係に着目し、破壊とエネルギーの観点からこの関係を明らかにするための研究を進めている。本年度の目標は機械的クラック等の予機械的破壊痕と電気トリー等の予電気的破壊痕を有した試験片の作製と評価手法の開発であった。本年度の主だった研究成果は次の通りである。 1.3Dプリンタ製の積層造形絶縁材料を用いて、クラックの起点になりうると考えられる微小な層構造と機械的応力とが電気的破壊に与える影響を、絶縁破壊試験と有限要素解析によって評価した。また、破壊の痕跡をX線CT装置で観察した。その結果、適切な圧縮方向の機械的応力を絶縁材料に負荷している時は、無負荷時に比べて、見かけの絶縁破壊強度が向上すること、そしてその傾向は積層造形の層方向の違いによらないこと、破壊の痕跡は材料の構造によって違いがあることが分かった。 2.高電圧印加試験によって、ポリエチレン試料の内部に電気トリーを発生させたものを作製し、電気トリーの3次元構造を取得するため、大型放射光施設SPring-8にてX線による試料内部形状の計測を行なった。ビームラインBL20XUにある高分解能のX線CT装置を用いて、ポリエチレン試料内に生じた電気トリーの3次元形状画像を取得した。 3.微細な平行溝構造を持つ試料を3Dプリンタにより作製し、クラック状平行溝構造を這う沿面放電現象の研究を行なった。溝の方向に沿うように電圧を印加した場合と、溝の方向に対して垂直に電圧を印加した場合とでは、後者のほうが高い沿面放電電圧を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初に定めた研究目的に沿って研究を進めている。実験、解析手法については、平成30年度に実施予定の内容との一貫性を検討した結果、計画の一部を変更し、次年度予定分を先行して実施している。また、研究活動中に新たに得られた知見をもとに、当初予定していた研究手法を順次修正、改良しつつ研究を進めている。これに伴い、平成29年度実施予定分の試験(主に機械的破壊に関する試験)が一部見直しになったが、最終目標から見て総合的に評価すると、ほぼ当初の予定と同様の進捗度と考えられる。具体的には次のような状況である。 予機械的破壊痕に関する研究について、計画からの変更があった。これは、当初予定していた破壊試験では、試験片寸法と電気的性質が原因で試料表面において沿面放電現象が優先的に起こり、求めるデータが取得できないことが実験により確認され、その結果平成30年度に予定していた試験との整合性が得られないと考えられたためである。そこで、予機械的破壊痕に関する計画を一部組み替えた。予機械的破壊痕に関する試験については、代替案として3Dプリンタ製の絶縁材の層界面に存在する微小き裂を対象にして、機械的欠陥と絶縁破壊現象の関係を半定量的に評価する手法を検討し実行した(研究実績の1を参照)。 予電気的破壊痕に関する研究は、おおよそ当初の予定に沿って進んでいる(研究実績の2を参照)。エネルギー計測手法についてはまだ実験手法の検討中であり、この点は当初の予定に比べて若干遅れがある。他方で、平成30年度に実施予定であった内容に既に着手しており、一部当初の予定に比べて進んだ結果や、副次的に応用面での新しい知見(研究実績の3を参照など)が得られた。 成果発表については、国際会議口頭発表1件(査読付Proceedings1件を含む), 論文1件、査読なし報告書1件を実施した。 以上のことから、上記の達成度区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、予機械的破壊痕に関する研究手法について検討を続け、特に実験が困難な点については計算科学的手法の導入を試みる。他方、予電気的破壊痕に関する研究については、平成29年度に得られた結果を元に、試験条件や解析手法を吟味しつつ進める。さらに、エネルギー計測手法について、知見を持つ研究者、技術者と情報交換を行いながら、早急に適切な計測手法を確立する。 その他は当初の計画に沿って進めていく方針である。
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Causes of Carryover |
研究進捗により購入物品を変更し、かつ、予定していた出張を一部変更したため差額が生じたが、これらの差額は次年度の実験用サンプル購入に使用予定である。
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Research Products
(3 results)