2019 Fiscal Year Research-status Report
A taxonomic study for fragmental fossils of Anura from the Lower Cretaceous Sasayama Group
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17K18442
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
池田 忠広 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50508455)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 篠山層群 / 化石 / カエル類 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象としている篠山層群産カエル類化石は、前年より数十点増え、現在1294点確認されており、全身骨格の要素を留めた標本も新たに確認されている。これらの内、半分ほどの標本の剖出・一部剖出作業が終了し、部位が特定されている。これらの資料の分類学的帰属を明らかにするために、本年度は下記の項目について主に検討した。 ①昨年度に引き続き、分類に有用な骨学的形質を特定するため、トノサマガエルを対象に骨格標本を作製し、個体や、雌雄間、主観の変異等を検討した。本年度は21標本(雌14、雄7)を対象に頭蓋要素について比較検討したところ、各要素、鼻骨、上顎骨、頭頂骨、基底蝶形骨、鱗状骨などの全体形状について大きな違いは認められないが、各骨の詳細な形状、例えば基底蝶形骨のcultriform processは剣状~葉状を示し変異が認められた。これらを踏まえると、先行研究において分類や系統関係を議論する際に用いられている頭骨各骨の細かな形状については、改めて現生種を基に変異幅などを検討し分類に用いることが必要と考える。 ②篠山層群から報告されている二種、HyogobatrachusとTambabatrachusについて、先行研究においてCTデータが得られていたが、解像度が低く3Dモデルの構築が困難であった。本年度、新たにNikon-XT225を用い両標本の高解像度CT画像を取得し、各遊離骨の3Dデータを構築した。結果、両種の標徴、尾骨近位部・背側隆起の形状などについて新知見が得られ、また両種の仙椎、腸骨、橈尺骨、上腕骨、大腿骨、脛腓骨、尾骨等にはめ種内・固体内変異とは考えにくい明瞭な形態的差異があることが明らかになった。これらの情報を基に形質表を修正し、改めて系統解析を行ったが、これらの単系統性、系統的位置については、先行研究と同様の結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象とする篠山層群産カエル類化石は継続調査により随時増加しており、継続的に剖出・整理作業が進められ、全身要素を留める新たな標本が確認されている。約半数の標本の剖出・整理が終了しており、十分な標本が得られていると考える。 本研究は主として、現生種を対象に各骨要素の個体・雌雄間、種内、種間における変異や差異を検討し、化石の分類に有用な形質を特定すること、またこれらの情報とともに、同層既知種のCTデータにより、個々の遊離骨化石の分類学的帰属を明らかにし、同層カエル類相の種多様性を検討することを目的とている。同目的に対し、前者の現生種を対象とする研究においては、種内(トノサマガエル)においては各骨要素の形態的変異の有無を確認しているが、種間や属・科間といった階級における形態形質に比較には至っておらず、またshape等を用いた解析を試みているが、当初目的とした変異の数値的は定量化には至っていない。したがって、同研究に関しては相対的に遅れていると判断される。 一方、化石標本を対象とした研究は、既知種(HyogobatrachusとTambabatrachus)の高精度なCT画像を撮影したことで、個々の遊離骨の3Dモデル化が進み、一部表徴が修正されている。また各四肢遊離骨、腸骨等の詳細な形態が明らかになり、両種のそれらが示す形態的特徴に明らかな差異が認められている。腸骨、尾骨、上腕骨、大腿骨といった遊離骨化石に関し、最終年度に分類学的帰属を検討する標本の選定も概ね完了している。したがって、化石標本を対象とした研究に関しては予定通りに実施されていると判断される。 しがしながら、前述したとおり現生種を対象とする研究に遅れが認められることから、総合的に判断すると本研究には全体としてやや遅れが認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況の項に記したが、現生種を対象した研究に遅れが生じている。第一、同一種内における変異の検討について、現段階でもある一定の成果が得られているが、参照資料とする種の骨格標本が十分とは言えない。本年度も昨年度同様、平均生体サイズ以上の個体を採集し、骨格標本の作製・比較し、各変異の幅を定量的に示すように努める。同様に、国内・国外種の各骨格部位の形質情報を整理し、前年度までの成果とあわせ検討し、化石標本の分類学的帰属を検討するうえで適切、また不適切とされる形質の選定に取り組む。 篠山層群産カエル類の種多様性を検討するうえで必要不可欠となる、既知種2種(HyogobatrachusとTambabatrachus)の各遊離骨の形質情報については、新たなCTデータに基づいて四肢骨等代表的な部位の3Dデータが得られている。しかしながら、頭骨や椎骨など各骨が複雑に間接している部位に関しては精査が必要であり、本年度は主としてこれらを対象に個々の3Dデータを所得し、それぞれの形質情報の収集・整理に努める。 同層産のカエル類化石は千点を超え、約半数については剖出・整理作業が完了している。今年度もこれらの作業を継続するとともに、検討対象とする化石標本の選別、つまり形態情報を多く留める標本、例えば大腿骨等であれば、シャフトのみならず近位・遠位端まで留める標本など、比較的保存状態の良い分類に耐えうる標本を選定する。そしてこれらを対象に、現生種・化石既知種の研究成果をもとに、その帰属を検討し、篠山層群産カエル類化石の種多様性・群衆構成を明らかにする。併せて、これまでの研究成果を国内外の学会等での発表し、論文等での公表に努める。
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Causes of Carryover |
未執行の予算が生じた理由:当該年度には、10月開催の予定の国際学会で研究成果を発表する予定であったが、アブストラクト投稿期限までに予定する成果が得られなかったため、国内の学会にて発表を変更し、その分の旅費が執行されなかった。また所属機関の用務の関係上、年度末に国内外の他研究機関での調査を予定していたが、新型コロナウィルスの蔓延に伴い、出張等を断念せざるを得ず想定より旅費の執行が滞った。
当該年度予算の使用計画:最終年度においては、本課題の研究成果を国際学会で発表する予定だが、昨今の世界情勢の関係から、安全な渡航が出来ない可能性がある。仮に不可となった場合は、国内学会(年度後半開催)での発表を行う予定である。また、現生種の骨格標本の作製が滞っているため、技能者を雇用し、標本作成に努める。その他、各研究機関での標本調査の旅費、論文等の校閲費や、解剖用具や消耗品、PCソフトの購入で予算を執行する予定である。
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