2017 Fiscal Year Research-status Report
深さ分解X線吸収分光によるLiイオン電池・Si負極固体電解質界面の反応機構の解明
Project/Area Number |
17K18443
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
鶴田 一樹 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (50783510)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 深さ分解 / 軟X線吸収分光 / リチウムイオン電池 / シリコン負極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高容量リチウムイオン電池の実現に向けて、実用化に多くの課題を持つシリコン負極と電解質の界面電気化学現象を解明することを目的としている。具体的には、蛍光X線を利用した深さ方向に分解能を持つ蛍光深さ分解XAFS (X-ray absorption fine structure) 法を開発し、リチウムイオン電池の充電時に電解質-負極界面に発生するSEI (Solid Electrolyte Interphase、固体電解質界面相)の化学状態を観察する。充放電過程の負極表面をその場測定することで、SEI の形成過程や反応機構、電池性能との関係を明らかにし、シリコン負極高容量リチウムイオン電池の実用化に向けた設計指針の提案を目指している。 2017年度は蛍光深さ分解XAFS法の開発として、解析課程で必要なパラメータであるX線の侵入深さの校正実験をメインとして、他に深さ分解能や検出器の露光時間に対するS/Nの評価を行った。X線の侵入深さとスペクトルのS/N評価は、反射率測定により厚さを決定したNiとTiの薄膜試料(10nm-100nm)に対して実施した。しかし、露光時間に対するスペクトルのS/Nの評価は完了したが、金属元素は密度が高く軟X線の侵入長が数nmと小さいのに対して、準備した薄膜試料が厚かったために侵入深さを正確に評価することはできなかった。そのため、より薄い薄膜試料を準備して再実験を行う予定である。1層あたり20nmでSiO2とSiが交互に5層積層された標準試料においては、Si K-edgeでは表面から4層目まで、O K-edgeでは5層目まで約10nmの深さ分解能にて吸収スペクトルを観測することに成功した。その場測定用の電気化学セルの作製に関しては、予定よりも仕様の決定に時間を要したため設計が完了したところである。来年度の初期に、試作品を用いて真空窓などの要素技術開発も併せたテスト実験を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度に、蛍光深さ分解XAFS法の確立と並行して行う予定であったその場観察用の電気化学セルの製作が仕様決定に時間を要したため遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の初期に電気化学セルの試作品を完成させ、オフラインにて要素技術開発を併せたテスト実験を行い、前期に電気化学セルの最終版を作製する。また、X線の侵入深さの評価を数nmのNi薄膜試料の測定を行うことで完了させる。後期は当初の予定通りに、製作した電気化学セルを使用したシリコン負極に対するその場蛍光深さ分解XAFSの実験をSPring-8 BL27SUで行い、シリコン負極の界面電気化学現象を解明する。
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Causes of Carryover |
本年度に製作を予定していた電気化学セルの製作費として使用する。また、蛍光深さ分解XAFS専用の真空容器を製作する必要がなくなったため、その予算は二次電池用充放電装置の購入に充てる。
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