2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on egg capsule of viviparous shark for the development of artificial uterus
Project/Area Number |
17K18451
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Research Institution | Okinawa Churashima Foundation |
Principal Investigator |
冨田 武照 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 研究員 (90774399)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 卵殻膜 / 半透膜 / 人工子宮 |
Outline of Annual Research Achievements |
水族館等での飼育板鰓類は時に早産することがあり、このような早産個体を人工環境で育てる技術(人工子宮)が求められている。胎生板鰓類の多くは、哺乳類と異なり胎盤を持たず、その代り卵殻膜に包まれている。このことは卵殻膜が胎盤の機能の一部を持っている可能性を示唆する。そこで、卵殻膜の機能を解明することで、人工子宮開発に資することを目的とする。 本年度は、卵殻膜を物質が通過するメカニズムを解明するための構造観察を行った。具体的には、卵殻膜の切片を作成、透過型電子顕微鏡での観察を行った。その結果、卵殻膜は40枚程度の薄いレイヤーが積層した構造をもち、密度の高い表面と密度の低い深部に分けられることが分かった。さらに断面構造を走査型顕微鏡で観察した結果、卵殻膜表面に明瞭な孔状構造はみられず、内部は繊維状の疎な構造が見られた。この構造は、しなやかさと強度を併せ持つ工学的に優れた特性と関連すると考えられる。 併せて、直径10nm金粒子を卵殻膜に透過させ、断面を透過型顕微鏡で観察したところ、粒子の内部への浸透は見られなかった。一方、グルコースや塩化ナトリウムなどは膜を透過していることから、粒子サイズによる分別が起こっていることが分かり、卵殻膜に半透膜としての機能があることが明らかとなった。 以上のことから、卵殻膜には哺乳類の胎盤にみられるバリア機能(母体から胎仔への必要な物質は透過するが、細菌やウィルスなどは遮断する)を持つことが予想された。以上の知見は、人工子宮を開発する上で、限外ろ過膜が卵殻膜の代わりとして利用できる可能性を示唆する。
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