2017 Fiscal Year Research-status Report
「老い」の環境決定と福祉都市の規範に関する社会倫理学的研究
Project/Area Number |
17K18455
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Research Institution | Hokkai School of Commerce |
Principal Investigator |
見附 陽介 北海商科大学, 商学部, 講師 (10584360)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / 建築学 / 障害学 / 老年学 / 福祉 / 都市 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「(A):「老い」が生物学的な絶対的プロセスではなく、身体を取り巻く環境との機能的関係性によって社会的に構成されるものであることを解明すること」、と「(B):解明された見地から今日われわれが依拠している社会規範をもう一度問い直し、高齢化社会においてあるべき福祉都市の規範を基礎づけること」、の二点にある。本年度はこの目的のもとで、実施計画に基づき目的(A)と(B)の両方に関して基礎付け的研究を行った。 (A)に関しては、モダニズム建築(建築物および都市計画)の意義と効果を「標準化」との関わりから研究した。とくにアダム・スミスに代表される分業に関する経済思想史上の理解、およびテイラー・システムの構築にまでそのあとを追うことができる産業領域における労務管理方法の発展との比較から、その延長線上にモダニズム建築が位置付けられうることを確認した。 (B)に関しては、やはりモダニズム建築と上記諸要因の間の規範的連関について研究した。モダニズム建築と分業あるいはいわゆる「科学的」労務管理との間に見られる規範の連続性は、「効率性」のうちに認められる。本年度は、分業、標準化、労務管理などのうちに効率性の産業規範がどのように実現されているかを分析し、そのうえで同様のものがモダニズム建築のうちにどれほど見出されうるかを検討した。あわせて「福祉都市の規範」との関わりから、倫理規範としての「多様性」の今日的意義を上記産業規範との比較から確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき「「老い」を構成する社会環境の分析」を適宜実施した。計画A・Bともに一定の研究の進展と成果をあげており、順調に進展していると考えられる。ただ研究の途上で「効率性」の産業規範の多義性が明らかになり、今後の研究の道筋が複雑化する見通しも出てきたが、これは課題に対する多角的視点が研究により明らかになったことを意味しており、研究の進捗として評価すべきものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、本年度の研究により明らかになった今日の物理-機能上の社会環境の特性と「老い」との関係を本格的に研究し、「「老い」の環境決定」の理論的基礎づけを行う必要がある。このためには「高齢化」に関する社会学、福祉論その他の先行研究を調査したうえで、それらの理論上の限界を明らかにし、「老い」の社会的構成の理論的基礎づけを独自の研究から行うことになる。またあわせて最終年度の福祉都市の規範の解明に向けて、倫理規範と産業規範との関係(共存関係および相反関係)の研究のための下準備を進める必要がある。これに関しては、今後の研究として「効率性」の産業規範の多義性とくにその空間的実現における複数の可能性を「集積」に関する経済学的研究の成果などに依拠しつつ検討することが主な作業となる。
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Causes of Carryover |
今年度は他の研究助成金との併用期間(今年度限り)があり、またその併用助成金が、これまで行ってきた研究課題(「障害」)と本研究課題(「老い」)との間の橋渡し的な位置付けを持つ研究に対する助成金であったため、主に資料収集に関する研究費の使用の面で、本研究課題の基礎づけ的調査と重複する部分があった。これを受けて、科研費の今年度使用額の一部を本研究課題の主要部分をなすことになる次年度の研究に回し、科研費の効果的な運用を目指した。 次年度使用額の使用計画としては、旅費、資料収集費および建築物・都市計画の実地調査費などに充てる計画である。
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Research Products
(1 results)