2017 Fiscal Year Research-status Report
シーア派イスラームの聖廟・墓地の形成と発展:法理論と地理空間情報による総合的研究
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17K18456
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
守川 知子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00431297)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 墓 / シーア派 / 死生観 / イスラーム / 都市 / 地理空間情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる平成29年度は、主にイラン南部のシーラーズ市を中心に、同市の内外に散在する一般墓地の現況調査を行った。なかでもシーラーズ最大の墓地であるダール・ラフマ(Dar al-Rahmat)墓地と、17~18世紀にさかのぼることの可能な歴史的墓地であるダールッサラーム(Dar al-Salam)墓地については、その立地、発展・拡大の方向や方角、(旧)市街との位置関係など、特に綿密に調査した。あわせて都市研究や歴史研究の専門家たちと、シーラーズの「墓地」や聖廟(シャー・チェラーグ廟・ハーフェズ廟など)に関する意見交換を行い、「シーア派都市にとっての’墓地’」について知見を深めた。 また、現地での資料調査の結果、1920年代のシーラーズ旧市街の『死亡者帳簿(Daftar-e motavaffiyat)』という新たな資料の発見にいたった。同資料はこれまでまったく注目されたことがなく、きわめて稀有で貴重であることに加え、その内容は、本研究にとっての核心をなす、都市と墓地と住民をつなぐ非常に重要なものである。しかし、個人蔵のため、本年度の短期間の調査ではその写真版ですら入手が困難であった。今後、この資料の入手に全力を尽くすとともに、ほかの都市でも同様の資料がないか、資料調査を継続する。(調査の結果如何によっては対象都市を変更するなど、柔軟に対応したい。) また、シーア派社会に特有の「移葬」(死者を聖地に埋葬すること)について、広く19世紀以降の事例収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際にひとつの都市の一般墓地をくまなく調査することにより、都市形成における墓地の立地が非常に重要な役割を果たしていたことが明確になりつつある。また、これまでまったく利用されたことのない新たな資料を発見するに至り、その資料を今後検討していくことで、本研究の仮説が当初の到達目標以上に説得性をもって立証することが可能な段階となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新出資料『死亡者帳簿(Daftar-e motavaffiyat)』の精査とともに、シーラーズの墓地研究を歴史的観点からさらに進めていく。また、シーラーズ最大の聖者廟シャー・チェラーグ廟のワクフ文書の検討を行う。あわせて、イスファハーンとタブリーズの墓地の実地調査を行い、三都市の比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
調査対象地がイランのため、ヴィザの都合(アメリカへの入国が不利になる)により、本年度は単独で渡航をせざるを得ず、また、当初は知己の研究者のいるイスファハーンから始める予定であったが、別の都市から始めたため、現地での研究協力者への謝金等の支払いが不要であった。次年度は、継続してシーラーズの調査を本格的に行うと同時に、イスファハーンの調査を実施する予定のため、旅費および謝金は現地調査の際、使用する計画である。また、墓地のデータ入力と地理空間情報専用のパソコンを購入する。
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