2018 Fiscal Year Research-status Report
「災害文化学」の構想~東日本大震災後の文化実践を事例に~
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17K18467
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
日高 勝之 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (00388787)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / 東日本大震災 / 反原発 / メディア / ジャーナリズム / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に東日本大震災、福島原発事故に関するメディア文化状況の記録と検証を試みるものである。メディア議題の観点から見るならば、当初は、東北地方太平洋沖地震により引き起こされた被害が広範に語られたが、大地震および原発事故の発生から月日が経過する中で、メディア・言説空間では、原発エネルギー政策のありようへの関心などから、引き続き原発に関連する議論が議題化されてきた。当該年度は、主に福島原発事故、原発・エネルギー政策についてのメディアの議論と表象について多角的な実証研究を実施した。福島原発事故は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による地震動と津波の影響により発生した。福島第一原子力発電所における炉心溶融(メルトダウン)などの一連の放射性物質の放出による環境、食品、人体などへの影響、多数の住民の避難、社会的・経済的影響、さらには風評被害に至るまで、その影響は依然として計り知れないものがある。そのため、今年度は、主に原発にかかわるメディア、ジャーナリズムの議論、知的言説を概観しつつ、「3.11」以降の状況を検証する試みを行った。研究成果の一部は、論文や国内外の研究発表で発信した。特に今年度の研究で焦点をあてたのは、福島原発事故後、放射能への不安などから自主的に避難した人々によって発信されてきたソーシャル・メディア上の言説である。自主避難者は原発事故後に関連のブログを数多く発信してきた。これらを研究対象化することで、取り上げられる機会の乏しかった自主避難者の声を議題化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災、福島原発事故はきわめて広範な影響と被害をもたらしたため、これらを扱ったメディアの議論や関連の知的言説、文化表象は膨大な数にのぼり、なおかつ現在も生産され続けているため、それらを整理を行うのに予想以上の時間がかからざるを得ないのが主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に行った研究内容をさらに深め、福島原発事故に関連するメディア状況を整理する研究成果を発信するつもりである。その上で、「3.11」全体を考えるために東日本大震災に関わるメディア、文化を統合的に整理する研究を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
東日本大震災、福島原発事故に関するメディア文化関連のものは量的に極めて多く、質的にも広範にわたり包括的な検証には時間がかかるため。次年度は引き続き資料収集、調査等を幅広く実施する予定である。
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