2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K18472
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
西村 勇也 熊本高等専門学校, 制御情報システム工学科, 准教授 (60585199)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 楽器音響 / 音楽音響 / 放射指向特性 / バイオリン / 駒 / 魂柱 / CTスキャン |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度はレンタルした4台のオールド・コンテンポラリーバイオリン(Luca Maria Gallo 1990年、Frederic Chaudiere 2008年、Mario Gadda 1986年、Gand & Bernardel 1884年)においてX線CTスキャンを実施し、バイオリン職人による調整前後の駒・魂柱の移動度の定量化及び、実演奏時の空間放射特性の測定を終了している。さらに、測定結果より定量的な指針を提供すべく詳細な魂柱と放射指向特性の関連性を調べるために、魂柱の微小な移動と放射特性の相関について測定を開始している。 空間放射特性の可視化については無響室内の正二十面体に等密度に配置した42チャンネルのマイクロフォンより取得した各音圧レベルを正規化し、カラースケールにて表現することが可能となったことにより、より視覚的に放射指向性の尖鋭さを理解することが可能となっている。 また、CTスキャンを用いた駒・魂柱の移動度の測定法の変更を行った。当初の研究実施計画では、熊本県産業技術センター保有のX線CT検査器を用いる予定であったが、微小な移動度を測定することが困難であったことに加え、熊本地震で被災した測定器・測定室のメンテナンスに時間を要していたため、H30度は熊本県大津町に本社を構える株式会社RPVの協力を得て形状変化を視覚的に確認可能なビューア表示を依頼し、かつ微小な移動度の測定を実現した。この他にもX線CT検査器は熊本大学工学部社会環境工学科のX-Earth Center保有のマイクロフォーカスX線CTスキャナでの測定も実施した。両者とも高精度の測定が可能となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究実施計画に基づき、本研究は3年間で数十台のバイオリンについて調査し、バイオリン職人の調整による指向特性の定量的な指針作成を目標としている。そのために研究計画を以下の研究サイクルで取り組んでいる。 (1)バイオリンの筐体・駒・魂柱のX線CT測定により寸法・位置関係を明らかにする。 (2)理論計算によって楽器の共振周波数の解析を行う。 (3)無響室でのバ イオリンの実演奏音収録により空間放射特性(指向性)を測定する。 (4)バイオリン職人による駒と魂柱のバランス調整を実施する。 (5)調整後のバイオリン に対し研究手順(1)~(3)を再度行い指向性の変化を解析し、調整による位置関係と指向性の相関指標を作成する。 H30年度は4台のバイオリンによる研究サイクルを終えている。ただし、バイオリン製作には流派や製作時に参考とする銘器のモデルがあるため、表裏の板形状・厚みには流派ごとに特徴が存在することが解った。このため、レンタルする楽器を選定する際は流派に拘り、ターゲットをやや絞った形を取った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、昨年度ターゲットを絞って測定した流派のバイオリンにおいて、より詳細に駒及び魂柱の移動と放射指向性の相関関係を調査する。なお、選定した流派は最も広く一般的に楽器製作時のモデルとされている流派であるため、本研究で作成予定の相関指標は一般的なものと言える。
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Causes of Carryover |
H29年度に提出した様式F-7-1の8.今後の研究の推進方策で記載した通り、バイオリン借受に多くの費用が必要となったためH29年度からの繰越金及びH30年度の直接経費から278万円の借受費用一式を使用している。このため、当初予定額からの残金3,328円が発生した。
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