2017 Fiscal Year Research-status Report
中世における音声・音曲の実態にせまる―読経音曲を基軸として―
Project/Area Number |
17K18478
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
柴 佳世乃 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (60235562)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 中世文学 / 仏教 / 音曲 / 儀礼 / 読経 / 講式 / 法会 / 唱導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世において様々なかたちで体系化がなされた〈音曲〉の実態を、仏教儀礼における音声、特に読経を基点として具体的に解明し、諸芸能が音曲面で連動していることを浮かび上がらせることを企図するものである。 29年度は、法会において読経とセットで行われた説経(唱導)の音曲に焦点をあてた。従来、唱導の音曲は、読経音曲と同様、あまり体系的に顧みられることがなかったが、解明の手がかりになる資料が存する。『声塵要次第』、称名寺蔵『式事』『法則集』等がそれである。これらを用い、法会でどのような音声が発せられていたのかの具体相を捉えた上で、唱導の音曲をより具体的に捉えるため、講式の復元を行った。安居院唱導を打ち立てた澄憲の作である『如意輪講式』の資料的価値に鑑み、本講式の復元実唱の基礎作業を行った。翻刻・解読、そして訓読が完了し、譜(音曲)を付ける共同作業も終えて、実唱に向けての作業に取りかかっている。 『如意輪講式』を起点とした、文学・宗教・芸能にわたる影響や資料的価値についても、学会発表や論文を通じて考察した。澄憲のみならず、血縁関係にもある貞慶についても新知見が得られることとなった。すなわち、澄憲の『如意輪講式』を貞慶が改作しており、澄憲から貞慶への直接的影響が初めて見出された点で、研究が大きく前進した。また、資料調査を重ねる内、澄憲作と見られる新資料を見出したので、併せて唱導の音曲面、資料面から検討を加えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の読解と演唱に向けての作業を着実に進めている。声明の専門家との講式実唱に向けての作業は順調に行われ、基礎作業はほぼ完了した。30年度の秋に、実唱の法会が行われる予定である。その際に、学術的意義を広く一般に向けても発信するつもりである。 読経音曲についても、唱導の実唱復元と密接に絡む作業であるので、講式復元をもとに基礎作業に着手している。 今年度は論文2本を公刊し、講演を1回行った。新年度早々の仏教文学会例会シンポジウムでは、当該のテーマに基づき、パネラーをつとめた。
|
Strategy for Future Research Activity |
講式実唱を実現させることをまず念頭に置く。さらに読経音曲について、引き続いて復元の基礎作業を固め、30年度後半には実唱の見取り図が描けるようにしたい。
|
Causes of Carryover |
資料の整理やデータ打ち込みなどを自分で行ったため、作業謝金がほぼかからなかった。次年度より本格的に読経音曲の復元作業を行うにあたって、声明家・声明研究者への謝金が多く見込まれることから、次年度にその分を繰り越した。
|
Research Products
(2 results)