2018 Fiscal Year Research-status Report
中世における音声・音曲の実態にせまる―読経音曲を基軸として―
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17K18478
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
柴 佳世乃 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (60235562)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 中世文学 / 仏教 / 音曲 / 儀礼 / 読経 / 講式 / 法会 / 唱導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世において様々なかたちで体系化がなされた〈音曲〉の実態を、仏教儀礼における音声、特に読経を基点として具体的に解明し、諸芸能が音曲面で連動していることを浮かび上がらせることを企図するものである。 30年度の大きな成果は、復元法要の実現が叶ったことである。平成30年9月30日に、中尊寺で勤修された「如意輪講式」七段法要がそれである。実唱にあたる声明家と声明研究者との共同作業を重ねて、〈音曲の復元〉を実現させた。 「如意輪講式」は、安居院流唱導の祖である澄憲の真作の講式である。資料調査および読解・注釈の作業を継続し、その音曲的側面にも光を当てつつ、本講式の資料的価値について4本の論文を執筆した。また学会シンポジウム「講式研究の第2ステージへ」において文学・宗教・芸能にわたる影響や資料的価値についても発表した。これまで知られなかった澄憲と貞慶との資料を通じた直接的関係も浮かび上がった。研究過程で見出した新出の経典については、資料翻刻の作業を続けており、講式の注釈も継続している。 また、読経をめぐる声の文化を考えるにあたって、西行について考察を行った。西行を通じて、平安末から鎌倉期にかけての読経をめぐる位相を捉えようと試みたものである。 公にした研究成果は次の通りである。①「醍醐寺蔵 貞慶作三段式『如意輪講式』解題と翻刻」(千葉大学『人文研究』47号)、②「澄憲から貞慶へ―『如意輪講式』をめぐって―」(『語文論叢』33号)、③「澄憲作七段式『如意輪講式』について―その資料的価値と復元実唱の意義―」(金色堂大修理五十年慶讃法要『如意輪講式』パンフレット)、④研究発表「澄憲と講式―『如意輪講式』を起点として」(仏教文学会 平成30年度4月例会「シンポジウム・講式研究のセカンドステージへ」パネラー)、⑤研究発表「〈西行〉と読経の声」(平成三十年度 西行学会 第十回大会)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の読解と演唱に向けての作業を継続して進めている。声明の専門家との講式実唱に向けての作業は順調に行われ、復元法要の第一弾は無事に執り行われた。引き続き、学術的意義を広く一般に向けても発信するつもりである。また、新しく見出した資料についても、調査研究を継続している。 読経音曲についても、唱導の実唱復元と密接に絡む作業であるので、講式復元をもとに基礎作業に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、読経音曲について、引き続いて復元の基礎作業を固め、実唱の見取り図が描けるようにしたい。
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Causes of Carryover |
資料の整理やデータ打ち込みなどを概ね自分で行ったため、作業謝金が少額で済んだ。次年度より本格的に読経音曲の復元作業を行うにあたって、声明家・声明研究者への謝金が多く見込まれることから、次年度にその分を繰り越した。
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Research Products
(5 results)