2019 Fiscal Year Research-status Report
中世における音声・音曲の実態にせまる―読経音曲を基軸として―
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17K18478
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
柴 佳世乃 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (60235562)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 中世文学 / 仏教 / 音曲 / 儀礼 / 読経 / 講式 / 法会 / 唱導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世において様々なかたちで体系化がなされた〈音曲〉の実態を、仏教儀礼における音声、特に読経を基点として具体的に解明し、諸芸能が音曲面で連動していることを浮かび上がらせることを企図するものである。 2019年度の大きな成果は、講式復元法要の実現に基づき、中世初頭の法会の実態をより具体的に解明できたことである。以下の①論文にて、唱導の大家・澄憲をめぐる法会の具体相について、『如意輪講式』を軸に論じた。本講式を切り口とした法会の様相については、一般向け講座にても紹介している(④)。調査研究の過程で見出された新出資料『随心如意宝珠転輪秘密観自在菩薩根本陀羅尼経』の翻刻紹介を行った(下記③論文)。本経は、澄憲周辺のみならず、これまで知られなかった文学・歴史・宗教にわたる一側面を明らかにするものである。これに基づき講式の注釈作業を推し進めている。また、読経をめぐる声の文化を考えるにあたって、西行について考察を行った(下記論文②)。西行を通じて、平安末から鎌倉期にかけての読経をめぐる位相を捉えたものである。さらに声明研究者との共同作業により、〈読経音曲〉の復元の糸口を見出している。東大寺修二会の音曲を譜本および読経の口伝書に照合する基礎作業を進め、これが有効な端緒になることに行き着いた。 公にした研究成果は次の通り。①柴「澄憲と講式―『如意輪講式』を起点として―」、『仏教文学』44号、2019年4月、②柴「〈西行〉と読経の声」、『西行学』10号、2019年8月、③柴「圓教寺蔵『随心如意輪経』(『随心如意宝珠転輪秘密観自在菩薩根本陀羅尼経』)翻刻と解題―澄憲『如意輪講式』と書写山―」、千葉大学『人文研究』49号、2020年3月、④一般向け講座:柴「仏教儀礼の音声の世界―日本の声を聴く―」、うらやす市民大学、2019年9月。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の読解と演唱に向けての作業を継続して進めている。声明の専門家との講式実唱に向けての作業は順調に行われ、復元法要の第一弾は無事に執り行われた。学術論文に加えて、広く一般に向けても継続して発信している。 読経音曲については、唱導の実唱復元における作業をもとに音曲読解に挑み、譜本と音源との照合を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
読経音曲について、引き続いて復元の基礎作業を固め、実唱の見取り図が描けるようにする。現在行っている方法が有効であることに、本研究を通じて行き着いている。
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Causes of Carryover |
資料の整理やデータ打ち込みなどを一部を除いて自分で行ったため、作業謝金が少額で済んだ。3月に予定していた数回にわたる調査・打ち合わせがコロナ感染拡大のために延期せざるを得なくなり、次年度できるだけ早く行うことにした。
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Research Products
(3 results)