2018 Fiscal Year Research-status Report
Seeing off endangered languages and selecting a langauge in deathbed
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17K18486
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
藤代 節 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (30249940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 理惠 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (00368507)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 危機言語 / 二言語併用 / 少数民族言語 / 看取り / 北方シベリア / イギリス文学 / ブロンテ姉妹 / D.H.ロレンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の2年目にあたる2018年度当初に、研究分担者としてイギリス文学を研究領域とする山内を加えた。主に藤代が取り組む「言語の看取り」に対して、「看取りの言語」の部分を山内が担当することで、本研究課題が掲げる2つの「看取り」について、前年度に増して、より深い分析と考察を進める態勢を整えることができた。 藤代は、北方シベリア域の消滅の危機に瀕した言語の使用実態について前年度に現地(ロシア国クラスノヤルスク地方タイムル県ドゥジンカ市)で調査対象としたドルガン語(話者1000人程度)、エネツ語(話者300名未満)の使用状況の情報を整理した。また、来日したこれら小言語の話者等から語彙の変遷について学術討議の機会を持つことができた。 山内は、主に文学研究の立場から「母語以外の言語で看取られること」の難しさ、また、文化や言語が共有されても互いの価値観などにズレがあり異文化・他言語の壁を乗り越えて気持ちを通じ合わせることの難しさについて考察を深め、特にブロンテ姉妹ならびにD.H.ロレンスの著作研究を軸におきながら、広く人間の「死」に直面して生じる人間の表現活動に着目した。また、山内は、年度末に英国にてFlorence Nightingale Museum, The Old Operating Theatre Museum, Freud Museum Londonの三カ所を訪れ、18世紀から20世紀初頭にかけての臨床の現場についての情報を収集し、医療の場にみる死と文学に描かれる死について比較しつつ、死に瀕した人間の普遍的感情と個別的感情のあり方について分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度からの分担者の当該研究への参加により、研究対象についてアジア的視点に加え、西洋文化圏の視点が加わり、テーマについて普遍性のある結論を見いだせる可能性が高くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2019年度は、まず、年度の前半には、2種の看取りについてこれまでの研究を代表者、分担者各自がとりまとめる。 代表者の藤代は、言語の看取りの部分を担当し、分担者の山内は看取りの言語の部分を主に担当する。藤代はシベリア地域の危機言語について、言語が消滅していく際にどのようなことが起こるのか、過去の小言語が被った言語変容に消滅の危機への段階に至る共通点がみとめられるかについて、主たる研究対象言語のみでなく広くシベリアの諸言語についても見極めていきたい。 一方、山内は、今年度前半は、継続して18-20世紀にかけてのイギリス文学を題材に西洋の死生観を含む看取りの場面での言語表現のあり方を探る。ここまでの成果の一環としては、D.H.ロレンスの著作を研究対象に用いた研究発表を本年7月に国際学会で行う(The 16th International Conference of the British Association of Romantic Studies,The University of Nottingham)。 年度の後半は、2つの看取りについて、日本語使用域でのあり方を含め、言語の「衰退」と人間の「衰退」に臨む観察者の視点をまとめる。言語の看取りの場面については現実的な使用状況の記録を報告するとともに、人間の看取りの場面で使用される言語の特性と言語生態との関連について分析し、現代社会の少なからぬ地域に該当する普遍的性質を提示していきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度は、本科研費補助金での海外からの招聘が行えなかったため、全体に補助金の残額が大きくなった。 2019年度は、研究代表者、研究協力者のそれぞれが、ロシア、英国での学術集会へ参加する予定であるので、その旅費を支出し、また、最終年度であるので、研究成果の紙媒体での出版とウェブ上での公開をめざしたい。そのための補充調査、印刷費、外国語校閲などとして補助金を使用する。研究成果の一端については、公開の研究会の形等で、本研究課題に関心を有するより広い分野の研究者をはじめとする人々とともに討議する場を設定することも目指している。
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Research Products
(3 results)