2019 Fiscal Year Research-status Report
Seeing off endangered languages and selecting a langauge in deathbed
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17K18486
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
藤代 節 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (30249940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 理惠 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (00368507)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 看取り / 危機言語 / 悲嘆 / 医療現場 / 少数言語 / 言語選択 / 危篤 / 言語表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は3カ年で計画したこの研究課題の最終年度にあたる。本研究課題は、言語の看取り、即ち、危機言語が消滅に至る過程でどのようなことが具体的に生じるのかについて、研究代表者が主に研究対象としてきた北方アジア、特に極北シベリアのチュルク系小言語のドルガン語使用の環境においてまず観察に入ることから始めた。当初1名でパイロット的な研究として着手し、「言語の看取り」にまつわる研究と並行して、「看取りの言語」にまつわる研究、即ち、人間が身体的に危機的状況に陥った際に選択する言語表現、また、その言語使用について、観察を行う予定であった。幸い、2年目に分担者として山内理惠(英文学)が加わり、対象とする地域及び事象を拡大することができた。山内は、危機的状況における人間の言語行動について古今の文学作品に「悲嘆」をキーワードに材を取り研究を深化させた。 最終年度の今年度は、藤代と山内がそれぞれに行った研究をまずは学会発表、さらには、論文として公開、結実させる一方、「言語の看取り」と「看取りの言語」に通底する、文化の文脈は異なろうとも人間が生老病死に際して選択する言語行動はどのようなものであるかをより明らかにするための研究に取り組んだ。また、その一環として、北方言語研究者やロシアの医療現場で働く医師をロシアから招聘し、ワークショップ「生老病死とシベリアの言語文化 ―ロシア、サハ・ヤクーチヤ、アムール沿岸域、日本―」を神戸と釧路で2月に開催し、バイリンガルが常態である危機言語圏での諸問題及び具体的な医療現場の状況などの知見を得ることが出来た。 この研究はパイロット的な研究に現時点では終始しているが、2019年度秋には、更に分担者を増やし、研究対象を拡大し、研究班を組織し、この研究を更に発展させる研究計画を科研費課題挑戦的研究(開拓)に申請したことも本研究課題の一つの成果といえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最終年度に2つの主題、即ち、「危機言語の看取り」と「人間の危機における看取りの言語」に通底する要素を抽出し、研究成果をとりまとめる予定であったが、新型コロナの感染状況が2020年に入り、悪化したことを受け、研究計画の最終段階の大半が頓挫してしまった。これらの中には、前年度までに行った研究成果公刊のための研究論集の出版計画なども含まれる。2020年度明け当初は状況に回復の目処は立たなかったが、徐々にインターネットなどを通じて研究活動を再開、継続することが出来るようになった。 2019年度までに進めた研究については、既にある程度の成果が上がっているが、公開手段の停滞に鑑みれば、全体としては、やや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、パイロット的性質を帯びた挑戦的研究として当初、予定していた内容よりも深化した形で、期間の大半の研究計画は遂行できているものの、最終年度の特に成果とりまとめと今後の後継となる研究プロジェクトに向けてその方向性を吟味する段階で、新型コロナ感染予防措置の必然性から最も重要な時期にも関わらず研究の停滞を余儀なくされた。 危機言語の看取りをめぐる人間の言語選択と言語行動のメカニズムを具体的環境、たとえば、医療現場などの文脈でとらえる研究へ発展させようとする段階で停滞が生じた。しかし、2020年度の前半には、これらの活動を挽回する予定である。 まずは、特に遅延していた研究成果の研究論集の刊行を急ぐ。また、2019年度の秋に申請した本課題を発展させた科研費プロジェクトのためにあらたに組織した研究班、即ち、言語・文化研究領域の他に看護学、特に国際看護学分野に研究領域をもつ研究者を分担者に加えた集団を率いて、申請採択の可否にかかわらず、今回の萌芽研究で着手した研究活動を徐々に開始、情報共有、情報収集の端緒をつけていく。 なお、昨年度開催した国際ワークショップで得た海外の研究者との協働についても、当面はインターネット上の交信になるが、現時点で全世界的広まりを見せるコロナ禍を本研究課題と決して無縁のものとせず、言語の大小にかかわらず、生命の危機に迫る状況における言語行動のあり方を注視していきたい。
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Causes of Carryover |
2019年度末に行った国際ワークショップや他大学の科研費プロジェクトと共同で行った国際シンポジウムの報告をメインとした研究冊子を作成する計画が遅れたこと、並びに本研究課題と関連する研究分野の研究者等と年度末に行う研究発表会が開催できなかったこと等、新型コロナの流行により年度末にかけての少なからぬ研究活動が阻まれたため、予定していた研究成果とりまとめの大半が予定通り実行出来ず、次年度使用額が生じた。 2020年度の前半には、これらの活動を挽回する予定で、経費の使用についてもほぼ計画実行の目処をつけている。新型コロナ感染予防に十分に留意しながらも、現在申請中の新たな開拓研究計画につないで行くための情報共有並びに情報収集の端緒をつけていくことにも努力したい。
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