2017 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ日系社会転換期における日系英語/日本語文学比較研究
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17K18488
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
平石 妙子 共立女子大学, 国際学部, 教授 (80060705)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 日系アメリカ人 / 日系英語文学 / 日系日本語文学 / 強制収容 / アジア系アメリカ人運動 / 補償請求運動 / 日系アメリカ人コミュニティ異人種間関係 / 異人種間関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1960年代以後の日系社会の転換期における日系英語文学と日系日本語文学とを比較検討し、日系アメリカ文学の多様性および異質性を考察するものである。初年度にあたる平成29年度は、本研究を進める上で必要な関連文献の調査など予備的作業を中心に進めた。まず、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のリサーチ・ライブラリーにおいて日系社会の転換期にあたる1960年度から70年代にかけての『羅府新報』や『北米毎日』などのマイクロフィルムを通して、当時の日系社会の状況について調査し、本研究に必要な資料を収集した。日系日本語文学については、上記の日系新聞の日本語欄に掲載された作品のみでは不十分であるため、『NY文藝』及び『南加文藝』などの日本語文芸誌に掲載された作品を検討した。さらに、ハワイで開催された国際学会に参加して、日系アメリカ文学や日系アメリカ人の歴史研究者との意見交換を通して本研究についての有益な示唆を得ることができた。ハワイ大学マヌア校のハミルトン・ライブラリーにおいて、ハワイにおける日系英語文学に関連する資料収集や日本語による文芸活動についての調査も行った。 以上の現地調査において収集した作品についてはジャンル別、テーマ別に分類して体系的に整理を行った。現在は、調査結果や資料の分析をもとに1960年代以後の日系社会の変化がそれぞれの文学にどのように投影されているかを考察する論文を執筆中で、6月末までに完成させて学会誌(AALA Journal)に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、現地での調査や資料収集及び資料の整理、作品の比較検討などの予備的作業については概ね順調に進めることができた。ただ、本研究の成果の一部として執筆中の論文については予定より長編になるために昨年度中に完成させることができなかったことから全体としては少々、遅れ気味である。だが、論文の執筆は着々と進んでおり、今年度の刊行を期すこととしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、現地での調査と資料および作品収集を継続しながら、以下のように本研究を進める。まず、1980年代以後の日系アメリカ文学の主要作品に加えて、『羅府新報』および『北米毎日』などをはじめとする日系新聞、及び日本語文芸誌『平成』や『新植林』等に掲載された作品を収集し、ジャンル別やテーマ別に分類して考察する。また、現地で日系アメリカ文学の研究者、および日系新聞や日本語文芸誌の編集者とのインタヴューも実施する予定である。 以上の調査や資料の分析をもとに、日系アメリカ人と他の人種・民族的マイノリティとの関係や異人種間結婚の増加による日系アメリカ人コミュニティの変容が日系英語文学および日系日本語文学にどのように投影されているか等を中心に両文学の比較検討を行い、今後の日系アメリカ文学の方向性や可能性を考察する。最終的には本研究の集大成として報告書を作成し、来年度には出版する。
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