2020 Fiscal Year Research-status Report
大和言葉を手掛かりとした日本人の身体名称、および身体観についての研究
Project/Area Number |
17K18497
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Research Institution | BIWAKO PROFESSIONAL UNIVERSITY OF REHABILITATION |
Principal Investigator |
野田 亨 びわこリハビリテーション専門職大学, リハビリテーション学部, 教授 (50156204)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 身体語 / 大和言葉(和語) / 解剖学 / 身体派生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、前年に続いて、倭名類聚鈔、古事記、日本書紀等の基本的文献から身体用語の採集し、特に頭頸部の大和言葉表現の収集を継続して行った.また本研究が研究期間の終盤にあたることから、特にこれまでの研究成果をまとめ、それらに関する論文執筆に傾注した。 研究成果は、学会報告として、 野田 亨:古代日本人の顔面についての表現 -「かほ」と「おも」-、第96 回日本解剖学会近畿支部学術集会、(2020)を発表した。また2019年に英国での国際解剖学会で発表した内容が Noda, Toru:Identification and Preservation of the Original Japanese Expressions (Yamato-kotoba) about Human body (the upper and lower extremities)、Journal of Anatomy, 236 (suppl.1), 343-344 (2020)として刊行された。 さらに論文では、これまでの膝周辺の古語に関する研究成果は和文論文としてまとめた、「大和言葉による身体表現と古代日本人の身体観(膝周辺の古語)」を藍野大学紀要に投稿、そして上記の国際学会で報告した四肢の古語に関する内容の一部を欧文論文とし、"The Original Japanese Expressions (Yamato-kotoba) of Human body (the upper extremity)"を、Aino Journalに投稿した。前者は現在、査読中、後者は査読が終了し、アクセプトされ、近日、刊行される予定である。また既に学会発表した上肢についての和文論文や下肢についての欧文論文、さらに「唾」に関する研究も論文として行く予定であり、着実に研究成果は得られつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の進捗状況の遅れについて、 令和2年当初から、新型コロナウイルスの蔓延による在宅勤務、また大学までの大阪~滋賀間の公共交通機関での通勤の自粛要請、また不慣れなオンライン授業の準備とその習熟に関わる負担増、さらに各学会、研究会等の集会の中止も加わり、研究に集中できる時間が減少し、研究の執行、および学会発表や論文執筆などの研究成果の公表などに支障をきたしている。こうした理由で研究の進捗状況の遅れが発生している。
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Strategy for Future Research Activity |
大和言葉による身体表現に関する研究は、やっと頭頸部の表現の収集に進んだが、特に頭部には重要な感覚器が多く、表現も多数に存在するため、身体表現古語の採集や発表にはやや時間がかかっている。さらに内臓における身体語彙の収集、検討に進んでゆきたい。 本研究の最終年である本年度は、これまでほぼ検討を終えた研究成果を論文の形にまとめることが現時点での目標である。上記で述べたように、上肢と下肢については、それぞれ、欧文と和文の論文を上梓したので、次に上肢についての和文論文、下肢についての欧文論文を執筆中である。さらにすでに2019年度に学会発表した「唾」についての研究もほぼ終えているので、適当な雑誌に投稿することを考えている。今後もしばらくは、新型コロナによる影響で、本研究に割ける時間の減少などが予想されるが、全力で取り組みたい。 本研究の当初の目標であるヒトの身体各部の大和言葉による表現を遂行しつつも、その名称の特徴などについて発生した新たな視点も留意し、研究してゆきたい。これは本研究の発展的研究になるが、上代の身体用語には単音節の語が多用されていること、また身体に二ヶ所存在するものに対して、畳語、すなわち同じ語を繰り返し表現する用法がみられること。こうした上代身体語についての特徴についても研究を進めてゆきたい。こうした言語学上の研究成果は有益であると考える。
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Causes of Carryover |
当該年度において、びわこリハビリテーション専門職大学という新たな職場への再就職に関わる個人的な理由、さらに新型コロナウイルスの全国への蔓延にともなう対応などの社会的理由、この2つの理由のため、本研究についての十分な研究時間を確保できなかったことによる。 また今回、生じた次年度使用額は、研究期間がコロナ禍の影響でさらに1年延長が認められたことによる、次年度の研究の遂行、および論文出版費、学会発表などの研究成果発表への経費に有効に活用できるものと考えている。
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Research Products
(2 results)