2021 Fiscal Year Research-status Report
大和言葉を手掛かりとした日本人の身体名称、および身体観についての研究
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17K18497
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Research Institution | BIWAKO PROFESSIONAL UNIVERSITY OF REHABILITATION |
Principal Investigator |
野田 亨 びわこリハビリテーション専門職大学, リハビリテーション学部, 教授 (50156204)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 身体名称 / 大和言葉 / 古代日本語 / 音節 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究実績としては、論文2編と学会報告1件である。 これまでの人の上肢と下肢に関係した大和言葉による語彙を収集し、検討を加えた研究成果を2020年に投稿していた和文と欧文の下記2編の論文が2021年に出版された。これら2編の論文は出版社の都合から、2020年として出版された。野田 亨:大和言葉による身体表現と古代日本人の身体観(膝周辺の古語)、藍野大学紀要33、13-21, 2020. Toru Noda: The Original Japanese Expressions (Yamato-kotoba) of Human body (the upper extremity). Aino Journal 18, 31-38, 2020 また「大和言葉を手掛かりとした日本人の身体名称、および身体観についての研究」という本研究課題を遂行する上で、古代日本人の大和言葉による身体名称に関わる古代日本語の特徴について考察が必要であるとの認識から、身体名称を音節の特徴から捉える試みを行なった。この研究成果は、2021年11月に開催された日本解剖学会近畿支部会で「音節から見た身体名称」と題して、古代日本語では身体名称は最も短い単音節で表現されていた痕跡が認められること、そして、一音節、二音節、三音節からなる古代身体語の一覧を示し、それらの間の相互関係をいくつかの用例を通して発表した。野田 亨:音節から見た大和言葉による身体名称、日本解剖学会第97回近畿支部会抄録集 p.3、2021。これらの研究を通して、当初想定していなかった大和言葉による身体語彙の持つ、様々な相互関係を確認することができ、言語学の知見を取り入れた新たな研究アプローチを持つことができ、研究上の意義を認めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響、大学での業務の増加などで、研究はやや遅れている状況ではあるが、論文作成は進行中である。課題である大和言葉による身体名称については、様々な視点から大和言葉による身体語彙を捉え、研究を進めている。大和言言葉による身体語彙の記載は、万葉仮名で書かれた文書や仏典や古文書にふられたカナ、仮名書きの文字資料の中にのみ認められる。2022年度には、鎌倉時代に書かれた宗教書である正法眼蔵が真名書きと共に仮名書きされていることに着目し、正法眼蔵にかかれた大和言葉による身体語彙を収集し、考察を加え、日本医史学会第123回学術集会にて発表した。野田 亨:正法眼蔵にみる大和言葉による身体名称 日本医史学雑誌 第68巻2号 p.187。 そのほか、現在、人体の骨格の基本としての骨について、平安時代や鎌倉時代に編纂され、漢字の読みをカナで記された倭名類聚抄、字類集、類聚名義抄などの古辞書から大和言葉による骨の名称を収集し、考察を加えた論文を作成し「大和言葉による骨の名称について」という題名で びわこ健康科学(びわこリハビテーション専門職大学紀要)に現在、投稿中である。 以上、研究の進行状況に遅れはあるが、着実に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長が認められたことで、当初、想定していなかった研究方法上の問題点も把握でき、研究計画にしたがって、一定の研究成果を挙げられいることはありがたい。残された時間はこれまで学会発表してきた大和言葉による身体語彙に関する研究成果を一つでも多く、論文の形としてまとめて報告してゆきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究課題に対して、今年度もコロナの影響により、当初の計画したが終了していない領域(内蔵に関する大和言葉による表現など)が残っている。また研究遂行中に、同じ研究課題に関する内容ではあるが、新たな視点から研究を進め、学会発表したが、まだ論文としてまとめられていない領域(「唾」に対する古代日本人の認識、音節から見た大和言葉による身体表現など)などが生じた。このような状況で、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、研究期間の1年延長がさらに認められたことによって、次年度の研究の遂行、および論文作成経費、学会発表などの研究成果発表への経費に活用できるものと考えている。
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Research Products
(3 results)