2019 Fiscal Year Research-status Report
日本語聴解用辞書の開発を目的とした日本語学習者の聴解実態の実証的研究
Project/Area Number |
17K18503
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
野田 尚史 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 教授 (20144545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 寛 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10250648)
石黒 圭 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 教授 (40313449)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 聴解 / 日本語学習者 / 辞書 / 日本語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語を母語としない日本語学習者が日本語の日常会話を聴き取るとき,既存の辞書はほとんど役に立たない。わからない表現を辞書で調べても,辞書に載っていないことが多いからである。この研究は,日本語聴解用辞書の開発を最終目的として,日本語学習者に日常会話の音声を聞いてもらい,学習者がどのように誤って聴き取っているのかを明らかにするものである。 本年度は中国語母語話者とベトナム語母語話者を対象に調査を進める計画であった。中国語母語話者に対する調査は台湾で行うことができたが,ベトナム語話者に対する調査は新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止になったため,来年度に延期することにした。 一方,これまでドイツ語,オランダ語,スペイン語,中国語,ベトナム語などを母語とする学習者に対して行った調査データの文字化や整理,分類などを進めた。その結果,学習者の聞き誤りのタイプとしては,別の音声で聴き取るもののほか,「物件」を「ブケン」と聴き取る音声の脱落,「国土」を「コクドー」と聴き取る音声の添加,「500万以上はする」の「はする」を「わする」という語だと聴き取る不適切な区切りなどが多いことが明らかになった。 研究成果としては,「中国語漢字による日本語音声表記」という論文を発表したほか,北京日本学研究センターとの共催により北京で「コミュニケーションのための日本語学習辞書を求めて―中国人学習者のための新しい辞書の構想と開発―」というシンポジウムを開催した。なお,2020年8月にベルギーで開かれる予定だった16th International Conference of the European Association for Japanese Studiesでは口頭発表「日本語学習者の聴解困難点調査に基づく「わかりやすい日本語」の提案」が採択されていたが,新型コロナウィルス拡大の影響で1年延期された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画どおりか,計画以上の研究を行い,十分な成果が得られた。ただし,2020年2月にベトナムで行う予定だったベトナム語話者に対する調査はすべての準備が整っていたが,新型コロナウィルス感染拡大の影響でベトナムの大学がすべて立入禁止になったため,来年度に延期することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,中止になったベトナムでの調査を,調査が行える状況になってから先方と日程調整を行った上で実施する。その結果を含めて,さらに分析を進める。
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Causes of Carryover |
すべての準備が整っていたベトナムでの調査が,新型コロナウイルス感染防止を目的に現地の大学が長期間の全学休校に入ったため,調査を中止した。その調査を次年度に行う予定である。
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